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夏の夜のLabyrinth

■■■ I'll remember - Meteor Shower ■■■



振り仰ぐ空は、満天の星。
それが、ほろほろと零れ落ちていく。
流星雨、と呼ばれる光景だ。
ヒトツ。
また、ヒトツ。
時に明るく、時に仄かに。
きらきらと尾を引いて、空に軌跡を描いていく。
いつか、彗星が散らばしていった塵たちが、今、こうして光へと変じている不思議。
幼い頃から、何度か見上げたことはあったけれど。
まさか、こうして科学的な事象として見上げる日が来るとは。
考えて、少し口元に笑みが浮かぶ。
そして、視線は手元の、実に散文的な数値データへと移る。
モバイル画面に映し出されているソレは、膨大な計算の結果の、ほんの一部。
緻密な計測と、計算と。
それが、空に瞬く星々の命の営みをも告げる。
かつて、『地球』にいた頃の人は、コンピュータの手を借りねば出来ない緻密な計算など不可能な頃から、延々と空を見上げ続けていたのだという。
物語を紡ぎ、時に人の運命を占い。
それでいて、常にどこか、科学的に見上げていた。
『Aqua』の人々が、科学的な事象を捉えるために空を見上げ始めたのは、ほんの、ここ数年のこと。
たった、一人を除いては。
緩やかに光の強さを変えながらも、人から見れば永遠の時を明滅し続ける星たち。
それが指し示す、『宇宙』という真実。
知らねば、未来はあり得ない。
遅すぎず、気付けたことを、いつか人は感謝することになるだろう。
そっと、静かに事実と緻密な計算とを残した者へと。
そして、問うのに違いない。
なぜ、誰もが気付かなかった、それに気付いたのか、と。
口元に浮かんだ笑みは、大きくなる。
答えを、彼は知っている。
満天の星が輝く空を見上げるのが好きだったから。
晴れた日の海を見つめるのが好きだったように。
ただ、空を見上げるのが好きだったから。
それから。

彼は、空を見上げる。
幼い頃から何度も、見上げてきた空を。
満天の星が、ほろほろと零れ落ちゆく空を。
緩やかに微笑みながら。


〜fin.

2004.02.01 A Midsummer Night's Labyrinth 〜I'll remember - Meteor Shower〜 Presented by Yueliang


■ postscript

夜空を見上げているのは忍。
宇宙に関するデータを残したのは、亮です。



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