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夏の夜のLabyrinth

■■■ RPG? NG! ■■■



「『緋闇石』ってさ、RPGのラスボス向きだと思わない?」
「はぁ?!」
いきなりの麗花の台詞に、他の五人は不思議そうに視線を向ける。
「純粋に科学に根ざして生活してる僕たちが相手にするよりという意味ですか?」
相変わらず察しがいいのは、亮。
忍が苦笑する。
「でも、俺らにとっちゃ『旧文明産物』は『魔法』みたいなもんだぜ」
「そうね、理解することも御することもできないもの」
須于の台詞に、ジョーも軽く頷く。
「『緋闇石』だけじゃない」
また、よりましにされるかもしれないと不安な俊を気遣っているのだ。俊は苦笑を浮かべてから、それをいつもの悪戯っぽい笑みへと変える。
「んじゃ、俺らもRPGのキャラになったほうがいいってか?」
「忍は剣だし、似合いそうね」
「ま、合う合わないはともかくとして、俺らはファンタジーの住人じゃないってことは確かだな」
麗花の顔に、にんまりとした笑みが浮かぶ。
「んふふふ」
漏れてきた不気味な笑いに、五人が警戒する。
「なんだよ、その笑いは」
「でも、ちょっと興味あるでしょ?」
「RPGだったら、どんなかってことか?」
「そ」
誰からともなく、顔を見合わせる。
「そりゃ……」
「麗花の言うとおり、あっさりばっさりだったら気持ちいいだろうけど」
「よーし、じゃ、決まりねっ!」
ポケットから小さなキューブ状のモノを取り出して見せる。
「幻想誘発素子ですね」
亮はどうやら、麗花の手のモノがなにか知ってるようだ。
「なにそれ?」
「旧文明産物?」
「そうですよ、いまで言うところの、ドリームキューブです」
ドリームキューブというのは、バーチャルリアルを体現できるゲーム機に搭載されている素子だ。人はまるで実際にその世界に行ったかのような感覚を味わうことが出来る。
総司令室にある訓練装置も、同等の素子を利用しているものだ。
「ふうん、現文明が追いつくモノもあるんだな」
別に、科学自体が崩壊してるわけではないのだから、当然と言えば当然だけど。『旧文明産物』と言われると、どうしても追いつきたくても追いつけないモノ、もしくはもう二度と造り出してはならないモノのどちらかのような気がしてしまう。
「今出回ってるのとは、少し、違いますけどね」
「どんなとこが?」
「今のモノは、基本的にプログラミングされたシナリオにそってしか作動しませんが、コレは人の精神感応で大きく左右されます」
「いまのだって、精神感応はしてるんだろ?」
「割合の差ですね」
「なるほど」
「『緋闇石』に関するプログラミングはないからね、やるなら、コレに限るって」
「でもさ、どうやって『旧文明産物』の方を手に入れたわけ?」
俊の当然の問いは、麗花のにんまりとした笑いで流された。
「さてね、さぁ、試してみたい?」
興味がないといえばウソになる。ドリームキューブを使ったゲームなら、山ほどやったこともある。この際、RPGの中だけでもいいから、『緋闇石』を消し去ってしまうのは悪くない。
「よし、やってみるか」
「のった」
「いいわよ」
「…………」
ジョーは、無言が肯定だ。
五人の視線が、最後の一人である亮に集まる。
「反対?」
「『旧文明産物』だから、使うとヤバイとか?」
「それは、ないですよ、仕組みは完全にわかっていますから……」
どこか曖昧な表情は、はっきりとした笑みに取って代わる。
「RPGの世界も、悪くないかもしれませんね」
「そう来なくちゃ、行っくよー」
麗花の明るい声と共に、周囲は白い光へと包まれていく。

気付くと、あたりは森だった。かなり背の高い木々がそびえ立っている。
その木々の間を、リスとも鳥ともつかない動物が渡り歩いているのが見える。
「なるほど、いかにもってな感じだな」
忍は呟いてから、あたりを見回す。
誰の差し金か知らないが、仲間集めからやれということらしい。
ひとまず、自分の装備を確かめてみる。
簡単な胸当てと肩当て、それから脛と腕にも皮製の当てもの。そして、腰に見慣れた『龍牙剣』。
防具は簡素だが、動きやすい方がありがたい。使いなれた武器が手元にあるならば、十分、フォロー可能だ。
剣と反対側には、小さな袋がある。どうやら、最低必需品が入っているようだ。一応中身を確認し始めて、小さな紙片に気付く。
広げてみると、たいそうな飾り文字でこう書かれていた。
『アルシナド城まで、来られたし』
どうやら、最初の目的地はそこのようだ。
忍は再度、あたりを見回す。
道が、一本。ここを進めとばかりに、目前に広がっている。
「じゃ、行きますか」
お気楽に、歩き出す。
しばらく歩いていくと、森の様子が一変したことに気付く。
さきほどまで、騒がしいくらいにさえずっていた鳥の声が消えている。
かわりに、あたりを支配しているのは禍々しい気配だ。忍は、龍牙剣を引きぬいて身構える。
がさり、という音とともに、野犬にしてはやたらにでかいのが飛び掛ってくる。
「げ、先制攻撃をされたってヤツ?」
軽口を叩きながら、横様に飛びのけると木の枝へと飛び移り、そして上から切り捨てる。
断末魔の悲鳴をあげることも無く、煙のように消え去っていく。
そして、なにやら明るい光が自分のまわりを回って消えていった。
よくはわからないが、レベルアップというとこだろうか。
自分がプレイしてるのとちがって、どこかに表示されてるわけではないので、いまいち実感に欠けるが。
などと思いつつ、さらに歩いていくと。
「だぁもう、シツコイな!」
聞き覚えのある苛立った声と、がさがさと何かがうごめく音。
忍はすっかり慣れた様子で剣を手にすると、声とは反対側から、アヤシイ物体に切りつける。
どうやら、上手い具合に脳天をかちわったようだ。
どさり、と音を立てて倒れてから、しゅう、と煙のように消える。
「よう」
「助かったぜ、コイツ、やったらめったらしつこくてさぁ」
勢いよく倒れてきた化け物をよけるのに、尻餅をついたまま俊が軽く手を上げて見せる。手元に握っているのは、槍のようだ。
「けっこう厄介だろ、あれは……一人で相手するのには、無理があるって」
「んなこと言ったって、エンカウントしちまったもんは仕方ないだろ」
言いながら、忍の手元をみた俊は、首をかしげた。
「あれ、お前、剣なのか?」
「剣が一番、性にあってる」
「でも、アイツにトドメ刺したのって……」
「俺だ」
「ジョー」
思わず、忍と俊がハモってしまう。なるほど、RPGに銃は許してもらえなかったらしい。
「へえ、似合ってるな」
違和感はない。が、当人はさっさと進みたいらしい。
「で、どこへ行くつもりなんだ?」
「なんか、城へ来いって書いた紙があったけど」
「俺も」
「俺もだ」
三人とも、目指すところは一緒のようだ。
「じゃ、行くか」
忍が、俊に手を差し出す。
「おう」
というわけで、一挙、パーティーは三人となる。
近距離と遠距離がそろったので、かなり楽な道行になる。
さらに進んだところで、えらい悲鳴が頭上から聞こえた。
「ひえー!」
大音響と共に、俊を下敷きにしたのは麗花。
「てへ、失敗失敗、目測誤っちゃったよ」
などと、俊を下敷きにしたまま、笑っている。
「いつまで乗っかってんだよ、どけったら!」
「あ、ごめん」
すばやく立ち上がって、にんまりと笑う。
「これで、五人揃ったね」
「はぁ?」
ぱたぱたと足音がして、須于が追いついてくる。
「麗花!大丈夫?!」
「お、ホントに揃った」
忍たちも驚いたが、須于も驚いたらしい。
「あら、皆、いたのね」
「たった今、合流したとこ」
「木の上からな」
「ああ……」
須于は納得して木を見上げる。
「ったく、味方にダメージ与えるなよな……」
俊が腰をさすってみせる。
「下敷きにされたの?」
頷いてみせると、須于は両手を柔らかく構えた。なにやら口で唱えると、ふわりとした光が広がる。
「おお、白魔法」
目前で見ると、なんとなく感慨深いシロモノだ。
「マジで楽になった、すごいなー」
「そういえば、須于って看護資格持ってるんだよね」
「『遊撃隊』では、まず使わない資格だけど、ね」
「いやいや、これだけできれば言うこと無いです」
「そうそう、すっかり楽になったし」
「RPGに魔法はかかせないしな」
感心して頷く男ども三人に、須于思わず吹き出す。
誰と比べてるのかすぐにわかった麗花が、少々むくれる。
「で、誰が黒魔法なの?」
「へ?」
「須于が白魔法、私が短剣」
後を忍が引き継ぐ。
「俺が剣、俊が槍、ジョーが弓」
「あれれ?直接攻撃パーティー?」
麗花が目をぱちくりとさせる。俊も肩をすくめた。
「力技で進めってか」
「というより、後一人が黒魔法なのだろう」
ジョーがぼそり、と言う。
「亮か、似合いそうだなぁ」
無表情に相手を骨の髄まで凍りつかせてそうだ。
皆、同じコトを考えたらしい。麗花など、思わず吹き出している。
「ひとまず、進めば合流できるかな」
「でもさ、そろそろ森も終わりっぽいけど」
「待てよ、終わりってことは……」
忍の台詞が終わるか終わらないかのうちに、とんでもない地響きが響き渡る。
「やっぱり!」
「森のボス登場ってか?!」
「いやー、なにこれー!!」
現れたのは、巨大な綿ぼうしのような真っ白な物体。だが、その上の方にある針のように細い目は、実に邪悪な感じである。
「うっわー、コレって、見るからにふわふわだよね?」
「イヤな予感するなー」
「それ思ってるの、お前だけじゃないって!」
案の定というべきかどうか。
ふわふわ綿ボス(麗花命名、仮称)には剣やらなにやらの直接攻撃はほとんどきかない。
最初の中ボスなのだから、本当ならそうたいしたことないHPだと思うが、与えているダメージが一桁台ではいつまでたっても倒せない。
しかも、相手は大きさにものを言わせてこちらを数人まとめて踏み潰すという極悪な技を繰り出してくるのだ。
いくら須于が回復しても、あっという間にHPは減っていってしまうし、須于のMPだって限りがある。
「ちょっとー、これって黒魔法なきゃ死んじゃうよう」
「綿なんだから、やっぱさぁ」
「道具とかってないのかよ?!」
「アイテム拾い忘れはないはずなのにー!」
「こんなとこでゲームオーバーはイヤだぞ!」
叫んでみても、どう考えてもこちらが不利だ。相手はほとんどダメージを受けていない。
「なんか、すっごく悔しいんですけどー」
最後の攻撃を加えるべく、ふわふわ綿ボスが飛び上がったのを、もう置きあがれないながらも恨めしそうに五人して見つめる。
が、その瞬間だ。
五人ともの耳に、はっきりと聞こえる声がした。
「紅蓮の炎」
とたんに、ふわふわ綿ボスの全身が、炎に包まれる。あっというまに、ヤツは灰になり風に流されていった。
起きあがる気力のないままに視線を向けると、見覚えのあるシルエットがぼんやりと見える。
華奢で女性かと見まがうばかりの端正な顔で、柔らかな黒髪が風にふわりと揺れている……
が、やっとのことで視点をあわせた忍は、ぎくり、とした。
亮の顔に浮かんでいたのは、馬鹿にしているとしか考えられない笑みだったからだ。
そして、見間違いで無い証拠に冷たい台詞を浴びせてくれる。
「王に選ばれたというので、どれほどかと思って見せていただいていましたが、たかがこの程度も倒せないとは困ったものです」
「ちょっとぉ、見てたってどういうこと?!人が大変な目に会ってるのを、黙って見てたっていうわけ?」
皮肉な口調にむっとしたのか、麗花が顔だけ上げて抗議する。
俊も、むっとした口調で付け加える。
「人には、向き不向きってもんがあるんだよ」
「そうよ、しかも仲間が苦しんでるってのにさ」
「仲間?……そうならざるを得ないのでしょうね、この有様では、実に不本意ですが」
「不本意ぃ?!」
「やめとけ」
ぼそ、と止めたのは忍。
亮の挑戦的で冷たい口調は、久しく聞いていなかったが。
そう、最初に『緋闇石』と対峙したときの亮は、まさにこの通りだった。優を失って俊を失ってずたぼろだった『第3遊撃隊』の為にだったが、おそらく四人の中には無意識に、『緋闇石』=冷たい亮という図式ができあがっているに違いない。
ということは、なにを言ったところで無駄ということだ。
忍の口調で、亮の冷たくて挑戦的なもの言いの原因が他にもわかったらしい。軽く頷いて諦める。
おとなしくなった五人の上に、亮は容赦無くばっしゃりと水を浴びせた。
「ぶはっ」
「そのまま、野垂れ死にするよりいいでしょう」
どうやら、回復の水らしい。水をかぶった瞬間はむせ返ったが、すぐに体が軽くなる。
「で、城の場所、知ってるんだよね?」
すっかり元気になった麗花が、びしょびしょの服を絞りながら訊ねる。
「知っていますが」
「案内、してくれないか」
忍ができるだけ、下手に出てみる。が、亮の態度は和らぐ様子は無い。
「ええ、構いませんよ、これ以上道草食われてもかないませんから」
「なんかこう、イチイチむかつくなぁっ」
麗花がぼそり、と言う。
亮は、くるり、と振り返った。
「なにか?」
「いーえ、何でもありません!」

そんなこんなで、亮の案内もあってそこから城までの道のりは楽だった。
城の大広間で、どうやら健太郎らしい王様(健太郎には王様よりも総司令官のほうが似合ってると誰もが思った)から「世界を狂わせている原因を探して欲しい」と頼まれて、仲文の薬屋さん(これは白衣だったので、いつもと変わりなかった)と広人の防具屋さん(やけに楽しんでいるように見えた)で思いっきり装備を整えて出発。
案の定、『緋闇石』が原因で、それを消せばいいっていう展開になるのだが、どのような道のりだったかは想像におまかせする。

「で、この扉の向こうに『緋闇石』がいるんだな?」
「僕の集めた情報に、間違いがあるとでも?」
言った俊の顔を、亮が冷たい視線で見つめる。
「ってことは、いよいよだな」
もう、忍に限らず、亮の毒舌にもすっかり慣れている。麗花がにやり、とする。
「装備は最強、レベルも必要以上に上がってる自信あるし」
「まぁね、あれだけ寄り道すれば」
須于が笑って、ジョーがぼそり、と言った。
「アイテムも一通りある」
「よっしゃ、行くぞ」
音を立てて、扉を蹴破る。
『愚かな人間どもめが』
不気味な空気があたりに充満しているのがわかる。それだけで、息がつまりそうだ。
が、その部屋の真ん中に陣取っているものを見て、六人は目を丸くした。
「…………」
しばし言葉を失っていたが、やがて麗花が呆けたように呟いた。
「なにこれ……」
呟いたとたんに、六人とも我に返ったらしい。ぶっ、と勢いよく吹き出した。
「ま、マヌケすぎる!」
「いくらなんでもさ、こりゃでかくなりすぎだろ?!」
「安っぽいガラス細工みたい」
「でかくなりゃいいってもんじゃ、ねぇだろ」
「何事にも、加減がある」
「これはこれで不気味といえないこともありませんが……」
そう、『緋闇石』は人の身長並にでかくなっていた。正八面体であるそれが、ただただ大きくなった様はいまいちカッコよくない。
『ごたくを並べていられるのも、今のうちだ』
言ったかと思うと、『緋闇石』はその全身に赤黒い光を宿し始める。
亮が、慌てた様子も無く前に進み出ると、静かに唱えた。
「完全なる鏡」
『緋闇石』が発した光は、猛烈な勢いで六人へと向かったが、亮の目前でなにかに反射される。先ほど亮が発生させた魔力を跳ね返す鏡に阻まれたのだ。
轟音がして、『緋闇石』は己の放ったダメージを食らう。
が、その程度で倒れるほど、やわでもないらしい。また、中央部に微かな光を宿し始める。
亮が、冷たい口調でぽつり、と言う。
「あの光が体中に充満するには、相当時間がかかりますね」
そう、それでなくても力を溜めるのに時間がかかっていたのに、いまや通常のん千倍くらいの体積となっているのだ。そう簡単には力は溜まらない。
「よっしゃ、袋叩きにしてやれ!」
「わーい!」
六人が四方八方から切って切って切りまくっているうちに、『緋闇石』はぎしぎしと軋みはじめる。
そして、いきなり部屋中に白い煙を噴出した。
「うわ!」
「やだ!なにも見えないじゃない!」
「ちっくしょ、なんのマネだ?!」
ゆっくりと薄れてく煙の中で、咳き込みつつも目を凝らす。
「……消えた?」
「消滅したの?」
あの、不気味な大きさの『緋闇石』はどこにもない。
煙が晴れるにつれ、暗黒から開放されたらしいこの場所が、じつに美しい場所なのがあらわになってきていた。
嬉しそうに目を輝かせる五人をよそに、亮だけが難しげな表情を浮かべている。
忍が、首を傾げる。
「亮……?」
「消滅は、していませんね」
「どういうこと?だって、あんなに重苦しかった空気が全部溶けてくよ?」
麗花も須于も、不思議そうだ。
「消滅したのなら、破裂音がするはずです。逃げたのでしょう」
「ちっ、しぶといヤツだなっ」
俊が舌打ちする。
「いつか復活したなら……また戦わなくてはならないでしょうね」
六人は、どこかで息をひそめているであろう『緋闇石』を見据えるかのごとく、空を見つめた。

「やーん、RPGでもダメだったぁ!」
周囲に見える映像が居間になったとたんに、麗花が声をあげる。
「誰だよ、RPGならすっきりって言ったのは」
「そうそ、これじゃ今となんも変わらないぜ」
亮が、くすり、と笑った。
「仕方ないでしょうね、六人とも『緋闇石』は消えたわけではないと知っていますから」
「そうね、みんなが消えないと思っていたら、消えないわよね」
「いいさ、今度、俺たちの前に姿を現したら、確実に消してやる」
忍の台詞に、五人とも無言で頷く。
消えていないと知っている。
だけど、いまは、どうしようもない。
振り切るように麗花が首を振り、それから訊ねる。
「ね、幻想誘発素子の創り出す幻想ってさ、多数決で決まるの?」
「基本的にはそうなりますね、多人数で使用した場合」
「ふうううん」
誰からともなく、忍、麗花、須于、ジョーが顔を見合わせる。どうやら、同じコトを考えているようだ。
亮の顔から、すと表情が消える。
「どんな目で見てるのか、とか、よくわかりますよね」
「うわ、亮、ごめん」
慌てて忍と麗花が両手を合わせる。
「今は、そんなこと思ってません!」
須于とジョーも、ぺこり、と頭を下げた。
「あの頃のこと思い出すと、つい……」
亮は、その様子を見て吹き出す。
「冗談ですよ、実際そうしてたのは僕なんですし」
その様子を不思議そうに見ていた俊が言う。
「っていうか、あれが地だろ?」

その日、俊の夕飯だけ、メインディッシュが無かったというウワサである。


〜fin.

2001.08.04 Midsummer Night's Labyrinth 〜RPG? NG!〜


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