湊サマよりいただいた俊


+++ 竹原湊 サマ +++

まさか、ウチのヤツを描いていただけるとは夢にも思わなかったので、幸せのあまりに思わず嬉しい悲鳴を上げました。
俊ですよ、俊ー!!
どうみてもなにか企んでる目付きと、決まってるポーズがステキです。
本当にありがとうございます!

しかし、俊のことだから、どんなにかっこよくてもロクなことは考えておるまい。
というわけで、おまけの小話↓でございます。



『 夏みかん強奪! 』

総司令部に寄った帰り道。
亮は、見覚えのあるバイクを目にして、足を止める。漆黒のスマートな車体は、間違いなく俊のモノだ。それから、隣のほとんど黒にみえるほどの深緑のは、忍の。
かすかに首をかしげたのは、止まっている場所が不可思議だったから。
ここは、リスティアロイヤルホテルの裏道で、総司令部への往復に便利な抜け道だ。
だけど、今日は二人とも、総司令部に用事はないはず。最近、総司令部に行った時は迎えに来てくれることが多いけれど、そういうときは総司令部のロビーで待っている。
なんにしろ、バイクを止めるには不自然な場所だ。
視線を先に向けると、二人がいるのが見える。
俊が得物を手にしているのを見て、亮はひとつ、瞬きをした。
驚いたのだ。
俊の得物は棒術にも使えるし鞭にもなるという、特殊なモノだ。鞭のほうにしているところでは、紐と言われれば、そう見えないこともない。
とはいえ、公道で得物をだしているとは、穏やかではない。
「なに、してるんです?」
不意に聞こえた声に、忍も俊も、ぎく、と肩をすくめる。
慌ててこちらを向いた視線は、声をかけたのが亮だとわかったとたん、にや、とした笑みに取って代わる。
「なんだ、亮か」
「どうりで、気配がなかったわけだよ」
などと言いながら、また上のほうに視線を向けた。
「…………?」
つられて、亮も視線を上に向ける。
枝が一本、壁からはみ出していた。
どうやら、ここらはちょうど、ホテルの庭園らしい。
「な、美味そうだろ?」
忍に言われて亮は、緑の葉がいっぱいに茂った枝に、眩しいくらいのオレンジ色があることに気付く。
「夏みかん……ですね」
「しかも、熟れまくってる色だ、アレは」
俊も、得物を構えなおしながら言う。
「この距離なら、余裕だぜ」
どうやら、あの枝の夏みかんを奪取しようということらしい。
なるほど、高いところのモノを取るなら、俊の得物はおあつらえむきの道具になる。なぜ、公道で得物を取り出しているのかは、わかったけれど。
夏みかんが食べたいのなら、わざわざ、あんなところのを取らなくても入手方法はいくらでもある。
「……スーパーで、売ってますけど」
夏みかんが、だ。
「アレがいいんだよ、アレが」
「そうそ、目前で実ってるってのがな」
「はぁ、そういうモノですか」
口々に言われ、亮は口をつぐむ。理屈はわからいなが、あの夏みかんが欲しいのだろう。
亮が賛成ではなさそうなものの、とがめる様子もないので、俊と忍は顔を見合わせて頷きあった。
「行くぜ」
声とともに伸び上がった鞭は、見事、夏みかんをいとめて俊の手に戻ってくる。
二人は満面の笑顔で顔を見合わせる。
「おー、上手くいったぜ」
「よしよし、試食だ試食」

と、いうわけで中央公園のベンチで、失敬してきた夏みかんの試食である。
亮が、忍から借りたナイフで、器用に剥いてみせる。皮が剥かれると、甘酸っぱい匂いが漂った。
「お、イイ匂いだな」
「やっぱ、色がいいだけあるぜ」
忍と俊は、待ちきれなさそうな声を上げる。
「はい、どうぞ」
半分にわけた夏みかんを、亮が二人に差し出してくれる。
「亮にも、やるよ」
かすかな笑みを浮かべて、亮は首を横に振る。もともと少食のタチなのは知ってるので、二人とも強くは勧めない。
小さな房を、ひとつ剥いて。
「いっただっきまーす」
とばかりに、二人して夏みかんを口にする。
そして、沈黙。
亮は、気持ちよさそうに晴れ渡った空を見上げている。
まだ、二人は沈黙したままだ。
が、何か言いたげな視線が、亮を見つめる。
視線を感じたのだろう。相変わらず空を見上げたまま、亮は涼しげな口調で、ぽつり、と言う。
「あそこのは、観賞用ですから……肥料はやってないと思いますよ」
やっと飲み込んだらしい二人が、同時に感想を口にする。
「すっぱい!」

2001.03.03 A Midsummer Night's Labyrinth 〜The sun and a Chinese citron〜



[ Index ]