余所見サマよりいただいた『第3遊撃隊』


+++ 余所見 サマ +++

完結祝いで絵をいただいた時に、「他の人も描いてみたりしてるんですよ」とうかがって、「是非、見たいです」とおねだりをしてみたところ、ステキな絵を本当に見せていただけることに!その6、ラストです。
迷宮の面々です。生き生きとしてて幸せいっぱいです。
ありがとうございます!
せっかくなので、この表情の理由は?ということで↓。





『 いつもの午後 』

居間へと入ってきた須于は、先客に笑いかけようとして、あら?というように小首を傾げる。
ソファの真ん中の特等席に陣取ってテレビを見るという、麗花言うところの幸せシチュエーションであるはずなのに、明らかに頬が膨らんでいる。
視線も、テレビを睨みつけているように見える。
小首を傾げたまま声をかけようとしたところで、背後からへらりと入ってきた俊に先を越される。
「おおー、おたふくになってら」
「ほほーう?」
振り返ったスペシャルに不機嫌な麗花の顔つきに、俊はしまった、という顔になるが、時すでに遅し、というヤツだ。じりじりと後ずさるのに、須于はこっそりとため息を吐く。
ひっそりと入ってきて一目で状況を把握したジョーは、視線を逸らして俺は関係無いとばかりに豆を挽き始める。
もちろん、麗花の方はそれを見逃すわけはない。
「私っ、ミルクたっぷり砂糖たっぷりのカフェオレッ!」
「ふうん?それでいいのか」
顔も上げずにジョーが返す。
「え?」
麗花もだが、須于と俊も首を傾げる。
「キャラメルマキアート、飲みたいとか言ってなかったか」
まだご機嫌な顔つきではないが、目にきらり、と光が宿る。
「出来るの?!」
「まぁな」
須于がにっこりと微笑む。
「私も飲みたいわ」
「ああ」
ジョーが頷くのを待って、須于は麗花へと向き直る。
「で?どうしたの?」
「ドラマが、むーかーつーくー」
いつもよりも数段低い声が麗花の不機嫌度を表しているらしい。
が、俊は怪訝に足すことのアホかという顔つきになる。
「ドラマぁ?」
ギロ、と睨まれ、慌てて首をすくめる。
「何のドラマ?」
俊が墓穴を掘るのはいつものこととばかりに、須于はあっさりと無視して質問を重ねる。
「『小さな約束』!」
「ああ」
「あれね」
タイトルを聞いたなり、俊と須于は納得の声を上げる。
「アファルイオじゃやらなかったから、楽しみに見てたのにっ!この最終回は無いと思わない?!」
「えっ?」
部屋に入ったなり言われて、忍がさすがに目を丸くする。
「何?」
「『小さな約束』、再放送してたんだって」
須于の補足に、忍は苦笑する。
「あれか。ラストですんげ苦情いったんだよな」
「それまでが良かったもの」
須于も頷く。
「最終回で台無しよ!」
また、先ほどの怒りを思い出してきたらしく、麗花の頬が膨らむ。
「あまりに苦情が多かったので、最終回だけリテイクされたんですよね?」
忍と一緒に降りてきた亮が、いくらか遠慮がちに口を挟む。
ぐりっと向いた三人の視線に、亮だけで無く、奥でコーヒーを煎れていたジョーまでたじろいでしまう。
「それに関しては、もっと最悪なのよ」
須于が言えば、忍も頷く。
「それ、差し替えになってるのボックス版だけなんだよ」
「買わないヤツはもやもやしたまま、と」
俊が言い終えたところで、麗花の頬がますます大きくなる。
「ええー?!買わなきゃ見れないってことじゃない!最悪ぅ」
「よね」
須于も忍も俊も大きく頷きあっている。
亮が、いくらか首を傾げる。
「では、リテイク版は見たこと無いんですね?」
「あの頃、んな金ないない」
俊が大きく手を振るのに、須于と忍も頷く。
いちいち反応が大きいあたり、三人ともリテイク版が気になって仕方ないのに違いない。
亮の顔に不可思議な笑みが浮かぶ。
「では、思っていた以上にお役に立ちそうですね」
言葉と共に、出してきたディスクケースに、四人ともが身を乗り出す。
「あ!『小さな約束』!」
「もしかして?!」
ごくあっさりと亮は頷く。
「ええ、麗花が見てたことは知っていましたから、広人から借りておきました」
たいてい先に来て皆のお茶をいれたりご飯の下準備をしている亮は、麗花がなにを熱心に見ていたのかとうに知っていたのだ。
タイトルの下には、総集編プラス特別最終回とある。
「さっすが亮!」
満面の笑顔で麗花に言われて、くすり、と笑って肩をすくめる。
「僕は見ていなかったのですが……そうとうに納得のいかない最終回のようですね」
「総集編ならちょうどいい、見てなかった人間にもだいたいの話はわかるだろう」
ジョーが、いい香りを漂わせているカップを乗せたトレーを、テーブルの上へと置く。
にっと忍が口の端を持ち上げる。
「だな、んじゃ、鑑賞会といきますか」
「わーい、リテイクリテイク!」
諸手を上げながら、麗花が特等席をキープする。
「あ、ずりーぞ!」
「早い者勝ちよね?」
須于も、ちゃっかりと麗花の隣へと腰を下ろす。俊が、情けない声を上げる。
その間に、忍もジョーも亮までもが、それぞれに腰を下ろしてて、結局どんじりになってもいる。
「なんか、ハメられたー」
「ハメてなどない」
「お前が遅いんだろ」
「ほら、始まりますよ」
そんなこんなで、いつも通りの午後が始まる。

2005.01.26 A Midsummer Night's Labyrinth 〜daily evening〜



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