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新三国志II 孔明編


□ ストーリー
劉備たちに出蘆を促された孔明は、病気がちな親の世話を止めるわけにいかない恋人、翠蘭と一時的に別れることに。
平和な世になったら一緒になろうと約束し、翠蘭は桃の花びらを送り、「長相思」を弾いて別れを惜しむ。
時は流れ、桃園三兄弟も亡くなった後。
南蛮征伐に赴いた孔明は孟穫を心から下す。帰途、裏で糸を引いていた魏軍をも破るが、その際に姜維と出逢う。
凱旋途中、木鹿王の待ち伏せにあった孔明は、毒矢を受けて倒れてしまう。(第一幕)

死線を乗り越えた孔明は、北伐を開始。
洛陽まで引き寄せようという仲達に対し、早く戦を終らせたいと逸る姜維は勝手に天水城に出陣。軍規違反で捕らえられたところに、蜀軍が到着。天水城は落ち、姜維は孔明の手に。
共に戦の無い世を作ろうと孔明に勧誘されるが、姜維は降ることを潔いとせず、しばらく捕らえられたまま様子見をすることに。
姜維の登場に焦りを感じた馬謖は、街亭の守りに名乗り出るも、功を焦るばかりに大敗。多くの犠牲を出すことに。
馬謖は己の愚かさを悔い、敗戦の責を負って死罪に。
一連の出来事を見ていた姜維は、蜀に降ることを決意する。(第二幕)

呉が背後をつかない確約を得、再度北伐を開始した孔明はすでに病に侵されていた。
上方谷での攻防の後、戦況は膠着。
五丈原で翠蘭の忘れ形見、春琴と出逢った孔明は安心して旅立つ。
姜維たちは後を受け継ぐことを硬く決意するのだった。(第三幕)


□ 感想なぞ
今年も筋書き購入。
どころか、リクエストがあったとかで製作されたというサントラまでうっかり握り締める。
これで満足なんだから、困ったものです。
席は一等席の一番前、花道寄り。前回の迫力で味を占めました。

第一幕
まずは、ざっと前回のあらすじから。
色とりどりの旗を手にした兵たちが現れ、縦横無尽にアクロバット。
前回の黄巾賊と色での群雄割拠演出という、二重効果ですね。

孔明と翠蘭との別れでは、桃が登場するのですが、なぜに桃が思い出なのか説明が無くて残念。
翠蘭が奏でる琴は、優しくて切ない感じでした。
ところで、孔明は髪を下した時↓
出蘆前孔明
上げている時↓
敗戦処理仕様孔明
の大きく分けて二種の髪型があるのですが、どうしても下した方が関羽に見えてしまって仕方なかった……

舞台は転じて南蛮征伐へ(あっという間っぽい表現があったが、本当にね)。
南蛮勢が、かっこいい。象に乗って登場の孟穫、白虎も連れてるし。
象が退場する時も鼻が揺れていたりとかも、かわいらしい。
ちなみに祝融が猛穫の妹という設定。さらに、才鴻という妹もいたり、木麓大王が叔父だったりもします。
名を知った連中はひとまずおくとして、南蛮勢最強の集団といったら猿族↓。
らぶりー猿族
誰がなんといおうと、猿族最強。
京劇の孫悟空ライクなメイクの猿は、南蛮軍の戦闘力です。他がぴたりと止まって決めてるシーンも、かさかさ動いてるあたりがもう。
猿を束ねる四天王がいるのですが、、このうち一人は京劇の武旦。アクロバッティングな動きがすごく印象的でかっこよかったです。
七縛七従をこなし(数えてたら、六回のような気もしたのだけど)、南蛮は制圧されたのでした。
さて、妹な祝融、なんかやらかすだろうと思ったら、孔明に「抱け」と言って迫った。
なにゆえ、この手のシーンって「容姿は私に似るからかわいいし、あとは頭が良い子供」って言い切れるんでしょう?
頭がすっからかんで、容姿もあかんという、反対の可能性は考えないのか?

魏、蜀、南蛮の地理関係の設定が大変気になりつつも、南蛮帰りに魏軍と戦の孔明。
姜維が鮮やかに登場したというところがポイントとわかりつつも、やはり地理が気になります。
毒矢に射られて、大変だ!というところで第二幕へ。


第二幕
孔明がうなされてる間に馬謖と才鴻がすっかり出来上がってるのは複線として置いとくとして。
いよいよ、北伐です。
出師の表はちゃんとあって、劉禅も出てきます。
劉備が育てた養子で、戦の嫌いな心優しいお人なのだそうです。なかなかに考えた設定ですな。

場面は魏へと移って、息子二人の危機を救った姜維を惜しみなく賞賛していた仲達は、「あとは、休息しておれ」との命令。
「出る杭は打たれるからのう」
この台詞、仲達が言うと妙に説得力がある気が。
でも、早く戦を終わらせて平和な世の中が来ればいいと望んでる姜維は、納得できない様子。
劉備と関羽が目指して、孔明が受け継いだ夢そのものを抱いてるあたりも複線と見て良さそうです。

天水城で捕らわれていた姜維を目指しているモノは一緒と口説きつつ、いよいよ街亭。
子供が出来たと知った馬謖、「ここで手柄を上げねばならぬ」と半ば強引に大将となることに。
はっきり口にはしてませんが、最初の登場時に「お側去らずの一番弟子」のようなことを言っているので、姜維という存在にも焦っていたと思われます。
案の定、王平の止めるのも聞かず山頂に配陣して大敗し、街亭が落ちただけでなく、せっかく攻め取った天水城も危うい憂き目に。
皆を落として、関平とその養子の安仁が殿を務めることに。
ここで、司馬懿軍を阻む為に水計が用いられて、本水シーンとなるのです。
安仁に自分が関羽からもらった名である関平を譲って死んでいく関平はすっごくカッコ良かったです。
そして、空城の計。
もちろん、孔明は琴を弾きました。翠蘭に弾いてもらった曲ですね。
周囲の嘆願をよそに、馬謖自身も斬られることを望む潔さは、かっこよかったです。
段治郎さん演じる役は去年の程仲徳といい、ツボですね。
この一部始終をみていた姜維は蜀軍につくことを決意するのですが、天水から捕虜も連れてきたのか蜀軍、などと、少しツッコんでみたりして。
なんとなく物悲しい余韻を残して、第三幕へ。


第三幕
幕があけて、呉の仕様なのに吃驚。
孫権に協力要請のため、孔明自らが訪れたのでしたが、そんな安易に異動できる距離じゃないんですが?
うっかり、NHK人形劇が頭をよぎります(縮地の計ですかというくらいに恐ろしい速さで行き来してたから)。

体力回復と、魏に攻め入るスキをみつけるために蜀の館で考え込む孔明は、案じる姜維と語り合います。
孔明の恋人だった翠蘭は、その後魏の武将に嫁いだのだとか。そして、姜維も母親からもらった桃の花びらを持っていることが判明。
まさかの親子オチ?!と、微妙に不安になります。

ともかくも、北伐再開で、上方谷の火攻めです。
燃え盛りながら崩れていく櫓は、必死でぶらさがってる兵がいたりで、迫力ありました。
火を現す赤の幕が、さっと雨の青幕に変わるはずだったらしいですが、つっかかってしまったらしく、一部燃えたままで司馬懿は逃げ去りました。
ここらも、ライブの楽しみです。

戦況は膠着状態で、五丈原で床に臥す孔明の元に、翠蘭生き写しの娘、春琴登場。
そして、魏に嫁いだ翠蘭が産んだ子が、姜維だとわかるのでした。
「なにも言いませんでしたが、母の心にはいつも孔明様がいらっしゃったようです」
と言う春琴。
早く戦を終わらせて平和にしたいと願ったのは、母のおかげだと言う姜維。
孔明は満たされて逝きますが、姜維たちの実の父の立場は全くありません。

孔明の死を感知した司馬懿、いままでの鬱憤を晴らすがごとく、勢いよく攻めかかります。
が、そこへ空城の計にかかった時と同じ琴の音が響き、孔明が生きていると判断し、引き返します。
この琴は、実は春琴が弾いたもの。
姜維は関羽、劉備から孔明が引き継いだ夢を、さらに引き継ぐことを決意するのでした。
そして、孔明は翠蘭とともに天に帰っていくのでした。
今回は衣装変え多いと思ってましたが、なんと十五着。質素倹約が信条じゃなかったのか、孔明。

カーテンコールは、決意を新たにする姜維もなかなかでしたが、馬謖が秀逸。
才鴻との間に生まれた子が育ってて、才鴻が愛しそうに面倒を見ながら花道を行きます。
その後ろに馬謖が現れるのですが、彼は花道を行く彼らには追いつけないまま、舞台の奈落から、手を差し伸べて消えていってしまうんです。これが、切ない。

今回は、孔明の恋は翠蘭の子である姜維が同じ夢を背負ってきたことで救われてる感じでした。
どちらかというと、馬謖と姜維の対比のほうが印象深かったです。
とか言いつつ、劉備のまいた桃の花は拾わなかったくせに、孔明と翠蘭のまいた桃の花びらは一枚頂いてまいりました。
筋書きに大事にはさんであります。

ところで、後日知ったのですが、第三弾あるとか。しかも、姜維が主人公とか。
心臓に悪いが、やっぱり見に行きそうな予感。



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