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レッドクリフ


□ ストーリー
長坂破、舌戦、劉孫同盟、赤壁前哨戦(架空)


□ 感想なぞ
さすが人海戦術の国産なので、陸戦が大変にイイです。あの迫力は、一般の方にもオススメ出来ると思います。
基本は演義ベース(周瑜単体除く)。 曹操陣営(曹操個人以外)ではない三国志スキーの方には、色々とコネタも楽しめる良作かと。
特に劉備軍ファンに大変オススメ。
ちなみに、字幕版を鑑賞です。

先ずは、いきなり大興奮な長坂破。
劉備軍は、新野か樊城(新野と言った気がするんですが)から民衆と共に撤退中で、しかも悪路に差し掛かっているところ。
人間関係がともかくイイ!
今回のメインは、劉備、関羽、張飛、趙雲、孔明。
先ずは劉備。ご当人自らが、ひたすらに一緒に逃げてきた人々を助けてばかり。自分の妻子が取り残されてる、と知っても歯を食いしばって目前の困っている人々を助けてる。
しかも、顔も年を召しててもなかなかにハンサムで、そして声が耳にするっと入る低音ですっごいイイ。
人々を先導するっていうより助けあげまくってる兵を曹操軍守備用に回して欲しいって言われても、「人を助けられなくてなんの意味がある!」とあっさり拒絶。
(悪路の為、老幼は兵の助けが無いと進むことすらままならないので)
でねでね、の孔明。
音のみで相手の兵数のみならず、陣形まで読んでるのはさすがなんですけど、上記の主公の言葉に嫌そうな顔じゃなくて、真剣に頷く。
その後の指示、「撤退、人民保護最優先!」
ためらい無く、真剣な眼差しで。
主公の心意気まま伝えるますよって具合なんですが、もちろんちゃんと伝わります。
最後まで新野の後を見届けてた趙雲は、自分の妻子の危機を知っても動かない(立場上動くべきではない、と判断した)劉備を見て、一人で走り出すし、張飛は援軍来ないとわかっても踏ん張り続けるし。
関羽に至っては、配下の兵とひたすらに防御。
子龍の長坂破一人駆けは、がっつりと堪能です。糜夫人本人も生き延びようと頑張り続けて、子龍が追い詰められていくのを見て井戸への身投げを選ぶという、演出が良かった。
阿斗を抱き上げた後の子龍が、「ご一緒に」と井戸を見つめる辺りとか。
三人の武芸は、其々にきっちりと型が違い、見せ所も違って、とってもイイ!
子龍(ちゃんと白い鎧!)の速攻とか、関羽の構えとか、張飛の力技とか。
兵たちも、心から劉備たちに従ってるんですよ!人々を守る為の突撃命令に、ためらわずについてくんです。
目前に待つのが死と知っていて。
関羽配下っぽかったですが、将への信頼度含め、切ないながらも、ものすごくイイ演出でした。

予告動画の反射の術はココだったのは驚き。
関羽が曹操を背後から切り捨てる真似はせず、それに応えてその後取り囲まれた関羽に手出しを許さなかった曹操ってあたりは千里行のネタかな、と思ったんですが。後は赤壁後始末戦への前ふりですよね?
その後、呉と同盟を結ぶべきだと孔明が論じるんですが、そこで皆が「希望があるのかもしれない!」と表情を変えてくあたりも好き。
ああ、もう孔明信頼されてるんだな、と。
納得した劉備が、一杯のご飯を差し出すんです。
「呉までの道のりは長い。食べなさい」
食料不足の劉備軍にあって、貴重なご飯をお前が食べなさい、という心遣い。
劉備軍ってこうだよね、こうじゃないとね!

そんな孔明ですが、呉陣営に到着したなり食えない人っぷり大いに発揮であります。
一張羅ないから他国の君主の前でも着た切りスズメですよ、の埃だらけに始まり、舌戦+孫権説得もアナタどこまで真剣?(笑)。
劉備軍が不利だからという理由で曹操に降伏するわけがない、と言い切る瞬間には矜持ががっつりと!

周瑜に関しては、音楽のエピソード山盛りで微笑ましかったです。
陣営で聞いた子供の笛直しちゃうのも、某所での琴の弾き合いも、どんなに酔っても音の間違いに気付く貴公子の面目若如でした。
笛エピソードでは、イイ音になったのを聞いて、ノリノリな孔明がちょっとカワイイ。
周瑜と孔明が邂逅するというのが複線ストーリーっぽいですが、三国志ファンのナナメ目線なのかどうか、微妙に周瑜が乗せられ気味に見えます。
小喬の愛馬が難産と知って手助けするとか、先に奥さん懐柔しているあたりとか(笑)。
周瑜との会見では、会話のほとんどが琴の弾き合いってのは面白い演出でした。孔明が琴のシーン、ありがとうございまーす(そっちか)。

同盟決定で周瑜つれて孔明が夏口へと戻るわけですが、ココがいいんですよ。
兵たち相手にものすごい生き生きと訓練してる趙雲が、孔明帰着を見てものすごく笑顔で迎えてくれるとか、関羽が子供たちに学問教えてる(しかも、貧乏人なのに学問?って訊かれて「将来、これで食えるようになるぞ」と至って真面目に返す)とか、張飛が漢字の書き取りやらされてるとか(笑)。
極めつけは劉備が未だに、配下の人々の為にわらじをじっくりと編んでるところ。切れたら追加してくれるらしい。
我が君、さすがであります!

曹操がかなり変態でありつつも、きっちり魅力的なヒールであるあたりはステキでした。

前に見たインタビューで、人物は実年齢に近いイメージで、との監督談話があったように思ったんですが、それを意識さえしなければ献帝の描写がなかなかでした。
ただし、その他の曹操軍配下はズッタボロです。
どうせなら、この際曹操軍配下は全員架空にしてくれて構わなかった!というくらいに。
本当に酷すぎる。その名を使わないで、と張遼に関しては別の意味で泣きました。

呉では、孫仁がチャーミングでした。
周瑜は個人的に微妙に中途半端感が。演義ベースにしたいの?史実でいきたいの?と。
前半の主役は劉備軍っぽいから仕方ないのかな。

最後は曹操が水軍で攻めると見せかけて、陸から奇襲をかけてくるんですが、対策会議での孔明が最高。
「こうするのがいいのでは」
と亀を地図にのっしりと置くんですが、川の上。
「はぁ?!」
と驚く皆の前で、置かれたのは陸亀じゃない、と指摘されて肩をすくめてみたりとか。
ようは、曹操は陸から来ますよ、と読んでるんですね。
もう、ホントその性格の悪さがステキ。周瑜も読めてなかったっぽいし。
劉備軍単体の中じゃ絶対やらないよなー、もう、このお茶目さんめ!

ちなみに、この陸戦でも劉備軍の三将軍大活躍。
カッコ良すぎ!
其々、やはりちゃーんとらしいカタチでの活躍。
孔明が立てたらしい逐次変化の亀甲陣もなかなか。タチが悪くてステキでした。
周瑜が矢傷負いにいっちゃったのは早すぎであります。

ちなみに、桃園三兄弟の呼び合いはちゃんと「大哥」「二哥」「三弟」です。
あと、孔明も曹操軍には諸葛亮と呼び捨て。
ここらの呼び方は楽しくて面白かったです。

いよいよ本格的に曹操の水軍が動き出したぞ、ってところで続く。

演義、正史、民話であるけど、ここらで出るはずじゃない小ネタ(気付いた範囲)。
のっけ、曹操出陣時の孔融。死ぬのはココじゃない。
細かいけど、献帝が権力に脅かされ気味なシーンも赤壁付近では表立っては出てこない。
長坂破での、関羽が曹操に肉薄する付近は、殺したいってあたりは巻狩り、背後から襲わない義理難さとその後の囲まれた関羽を襲わないってあたりは千里行近辺のエピソードからと思われる。
関羽が子供に教えてるってあたり、張飛が手習いやってるあたりは民間伝承から来てるネタ。
劉備のむしろ織りも別にここらではやらない。
曹操の頭痛、ここらでは表立たない。華佗と曹操のエピソードもしかり。
周瑜が肩に矢傷受けるのも早い。
孔明の琴なんて、五丈原も近くならんと出ない。
孫権の虎狩も若い頃のエピソード。
亀甲陣は、博望破前の八門金鎖のアレンジ(と思われる)。
孫権の酒癖の悪さは年食ってから、嫁の貰い手が無いネタも荊州争奪前後。

どうやら、後半は孔明の鳩も活躍しそうです。十万本の矢とか連弩も次回っぽいので楽しみです。


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