□□□ 第七巻 □□□
 
第二十五回 『水魚の交わり』

(曹)ほほう、いよいよ孫権が動き出したか。ひ弱なぼんぼんかと思って
   いたら、劉埼も案外やるな。見込みは甘いとしかいいようがないが。
   周瑜がいなかったら、嫡子なんて無視されて力づくで江夏は
   踏み潰されていたぞ。
(劉)病床とはいえ劉表健在だからどうだったかな。ともかく、やっと
   孔明が劉埼殿を江夏の守りに付かせたのかわかったよ。これを読んで
   いたんだな。

(曹)周瑜はなかなか機を見るに敏の男だからな。しっかしお前のとこの
   兵、凄いな。専属の将兵二千と民兵三千で五千だと?
   しかも、もめまくってるぞ。
(劉)雲長(関羽)にも信用ならんと言われてるしな(苦笑)。
(曹)子龍(趙雲)が聞いてきた悪い噂ばかりの中身が微妙に気になるが。
(劉)人間、嫌いだと思えばどんなことでも悪く取るさ。
(曹)まぁいい、どのみち今のうち潰させてもらうからな。
(劉)妙才殿(夏侯淵)なんだな、そういえば。
(曹)元譲(夏候惇)は登場しとらんのでな。
(劉)戦場は博望破だ。
(曹)ん?その手前で落石は使わんのか?
(劉)それ、翼徳(張飛)でも思いつくから。
(曹)今までの玄徳軍なら、絶対ソレだと思ったがな。随分と軍議も
   揉めてるなぁ。
(劉)剣は貸したが、まさか翼徳の一撃を受け流すとは思わなかったな。
(曹)酒でも飲んで待ってるのか、ってあたりが翼徳らしいな。
(劉)「勝利の祝い酒を飲むのはあなた方です」という孔明の返しは
   良かったね。

(曹)で、後は孔明の思うがまま、か。
(劉)作戦通りにことが進むたびに、誰もがいちいち確認してるのが
   信用無いなによりの証拠だね(苦笑)。翼徳なんて、民兵たちが
   「敵を見るな」と言われてると聞いて「話にならん」だもんな。

(曹)戦の直前に厠行きたがるような連中と命を共にしろと言われたら
   俺でも言う。
(劉)翼徳の危機に、皆が突進するのを見て信じられなかったようだがな。
(曹)ともかくも、妙才は大敗だな。
(劉)こちらは小気味いいほどの大勝だ。久しぶりの祝勝会だよ。
(曹)あれ?翼徳は?
(劉)おや、勝平もあんなにはしゃいでるっていうのに姿が見えんな。
(曹)あ、その勝平って子はいつから来たんだ?水鏡先生のとこにいた
   童だろうが。
(劉)こちらは小気味いいほどの大勝だ。久しぶりの祝勝会だよ。
(曹)あれ?翼徳は?
(劉)ああ、父親が戦に行ってしまったきり帰ってこなくてね、探してる
   んだよ。俺のとこなら、兵が集まるだろ?

(曹)ははぁ、えらく雲長に懐いてるな。
(劉)なにかと気にかけてるからじゃないかな。ま、うちは収まるとこに
   収まったってとこかな、翼徳と孔明も理解しあってくれたようだし。

(曹)翼徳は民兵の墓を作ってたのか。ああいう単純なところが羨ましい。
(劉)というあたりで、続きは次回。

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第二十六回 『孔明 新野を焼く』

(曹)相変わらずほのぼのしてるよな、お前のとこ。
(劉)翼徳(張飛)の顔見て笑う子供だぞ、そりゃ注目の的だろ。
(曹)そういうことが言いたいわけではないが、阿斗は大物だな。
(劉)勝平もかわいそうだけどかわいいね。
(曹)いいよなぁ、雲長(関羽)にああして慰めてもらって。
(劉)あの不器用さが好かれるんだろうね、雲長は。
(曹)その雲長に好かれる玄徳が羨ましい。ホント、玄徳っていろんな人に
   好かれるよな。劉表が亡くなったとはいえ、麾下の機伯(伊籍)殿が
   偽りの遺書の件と劉j降伏の一件を伝えに走ってくるんだからな。
(劉)雲長も使者を捕らえてきたし、コトは急を要するようだな。
(曹)って言ってる割に、荊州乗っ取りは出来ない、やらない、ってお前。
   俺は今度は十万の兵をしかけてるんだが?
(劉)信念に反することは出来ない(きっぱり)。
(曹)ああ、孔明が翼徳に同情されている……確かに、これじゃあどんなに
   頭脳明晰でもやり難かろうよ。
(劉)でも、雲長も「あれだけ頭脳明晰なのだから、なにか策を立てて
   くれるだろう」って言ってるよ。

(曹)無茶だ。敵の俺でも同情するぞ。にしても孔明は肩幅が無いなぁ。
   他がごついだけに、酷く細っこく見える。
(劉)だね、そのせいで背があるわりに華奢に見えるんだな。お、白河を
   見ているうちになにか思いついてくれたようだよ。

(曹)ああ、まんまと空城に誘い込まれてる。住民までいないなら、変だと
   思え。
(劉)いやぁ嬉しそうだねぇ。「明日という日が無いのも知らず」
(曹)孔明の台詞だな。
(劉)ああ、「天の利、地の利、共に我にあります」とも言い切った
   からね。この勝負、こちらがいただくよ。

(曹)来た、火攻め!
(劉)というあたりで、続きは次回。

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第二十七回 『不吉な赤い星』

(曹)火攻めに追撃、白河で水攻めでまた追撃、散々だな。
(劉)子龍(趙雲)と孔明が白河のいかだと舟は全て焼き尽くしたし、
   ややしばしは樊城で持ちこたえられるだろう。

(曹)本当のややしばし、だな。白河を埋めちまえば、なんの壁も無い
   ただの平城だ。
(劉)やはり見抜かれていたか、江陵へ行くしかあるまい。
(曹)悪いが、今度は容赦する気は無いんでね。百万で追わせてもらう。
   一日十里(当時400m=一里)だと?こちらは三百里だ、すぐに
   追い付くな。
(劉)民がいるから、これ以上は速度が上がらないんだよ。仕方ない、
   劉埼殿に援軍を求めよう。

(曹)雲長(関羽)をやるのか?
(劉)孟徳の軍を潜り抜けられるのは彼くらいだろう。
(曹)ああ、勝平もついてっちまったぞ、いいのか。
(劉)いいんじゃないか。手間取ったけど、通過出来たようだよ。
(曹)それより、あのえらくドギツイ赤い星はなんだ?
(劉)ああ、俺の身にとてつもない災いが降りかかろうとしているっていう
   印なんだそうだよ。

(曹)じゃ、民を置いてく気になったか?
(劉)まさか。俺は、死ぬ時に心に悔いが無いように生きたいんだ。
(曹)孔明ははなからわかっていたようだな。「言って聞くなら苦労は
   しない」
だとさ(苦笑)。
(劉)良くわかってくれているね(にこり)。
(曹)ちゃんと聞いてるか?孔明は玄徳が犠牲にならないなら、身近な
   誰かが身代わりになるって言ってるんだぞ?
(劉)大丈夫だ、俺が殿をつとめるから。
(曹)待て、総大将!
(劉)というところで、続きは次回。

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第二十八回 『淑玲死す』

(劉)雲長が戻ってこないんだよな、付いたという早馬さえ。
(曹)微妙だな。
(劉)やはり、もう一人使者を立てるしかないだろ。
(曹)言っちゃ悪いが、人がいないんじゃないのか。
(劉)そんなことはないよ、孔明に行ってもらう。
(曹)待て、軍師手放してどうする。孔明も困惑してるじゃないか。
(劉)命令だ、行ってもらう。
(曹)ああ、真剣に困った顔で離れたよ。どういうつもりだ?
(劉)今、ここにいたら全滅の可能性があるからな。孔明ならば、生き延び
   てくれれば俺が死んでも孟徳と戦ってくれるさ。

(曹)まった、嫌なヤツを残す作戦だなぁ。
(劉)だろ?やはり孔明には生き残ってもらわないと(にや)。
(曹)しかし、お前が完全に死の覚悟決めてるから淑玲が痛々しいじゃない
   か。「命は粗末にしないで下さい」って、前回から何度言ってるか
   わかってるか?
(劉)ともかく、淑玲と阿斗が生き残ってくれれば跡継ぎはいるからね。
(曹)にしても、親子水入らずのところに必ず邪魔が入るんだな。前回は
   孔明だし、今回は子龍か。
(劉)のんびりしてる間ではないからなぁ。
(曹)さすがの玄徳も、ちょっと荒れてるな。気合い入れてるというか。
(劉)たまにはね。
(曹)劉埼はいい人だよなぁ。万全の準備が出来なくても、明日には援軍
   出陣だなんて。
(劉)恩を忘れぬ、いい方だよ。
(曹)悪いが、その前に追いついたがな。
(劉)とうとう来たか。いてて。
(曹)怪我ですんで良かったな。って、おい、あれ。
(劉)子龍が駆けていくな?
(曹)あの、髪振り乱して倒れてるのって、淑玲じゃないか!
(劉)待て、子龍なら連れてでも駆けてくれるから、待て!
(曹)あ!井戸へ!
(劉)…………
(曹)子龍が阿斗を抱きかかえて走り出したようだが……続きは、次回。

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