□□□ 第八巻 □□□
 
第二十九回 『決戦!百万対一万』

(曹)子龍の見事な単騎駆けからだな。って、崖から落ちた?!
(劉)淑玲が守ってくれたようだよ。……まさか、淑玲が俺の身代わりに
   なるなんて……ただ、人の苦しみを見殺しに出来ない、誰よりも
   臆病な寂しがりやなのに

(曹)珍しい弱音だよな。ちと驚いた。
(劉)旗揚げの時から、ずっといてくれたからな。
(曹)ああ。だが、淑玲をダシに翼徳(張飛)と美芳を結婚させるとは思わ
   なかったぞ。
(劉)この状況だと、命捨てる可能性あるからね。枷作っとかないと。
(曹)おかげで、長坂の一喝は効いたぞ。
(劉)髪がすごいことになっていたな(苦笑)。
(曹)橋を落としてくれたので、孔明いないことはわかったし、得たものの
   方が大きかったがな(にやり)。
(劉)まぁ、それが翼徳だから。
(曹)玄徳も子龍も、気付いても咎めないところが、理解してるよなぁ。
(劉)やっちまったことを怒っても仕方ないしね。行き先は漢津に変更だ。
(曹)ははぁ、あそこは細い道になってるからな、大軍もいくらか勢いが
   減る、か。
(劉)多勢に無勢だが、幾ばくかは持つだろ。
(曹)それも孔明の助言か。その孔明は、劉埼たちの援軍には同行しない
   ようだがな。
(劉)考えがあるのさ。戻ってくるよ、絶対。
(曹)単身、海賊の船に乗り込むってのはどうなんだ。
(劉)だから、考えがあるんだって言ってるだろ。
(曹)小剣を投げられても避けないし、肝が据わってるってのは十二分に
   わかるが、普通に話が通じる相手じゃないだろう。
(劉)まぁ、見ててご覧よ。
(曹)って、うわ、なんだあの水軍は!
(劉)呂布の弟で海賊王、呂王だよ。昔の兄の恩を返しに来てくれた
   ようだな。本当に見事な手品を見せられてる気分だ。

(曹)三国時代に手品が存在したのかっていう野暮は言わないでおこう。
(劉)だね、孟徳も引いたところで、続きは次回。

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第三十回 『孔明の大論戦』

(曹)よくよく考えて見れば、いまさら玄徳に固執する必要はないんだよ
   な。江東潰せば、天下は自ずと俺のもの。
(劉)なるほど、孫権に揺さぶりをかけるか。軍師っていいなぁ、
   たなごころ指すように相手の動きを読んでくれる。
   孫権殿から使者がくるのか、なるほど。

(曹)そういうこと出来るのは、奉孝(郭嘉)と孔明くらいだと思うぞ。
(劉)そうなのか?ともかく、本当に子敬殿(魯粛)が使者に現れたよ。
   ほほう、公瑾殿(周瑜)殿は孫権殿に疎まれているのか、それは
   珍しい展開だな。

(曹)それもそうだが、俺には玄徳の相変わらずな親切ぶりの方が驚き
   だよ。俺のこと教えるのに江東に来てくれって言われて、素直に
   頷くか普通。
(劉)だって、困ってるんだぞ。
(曹)ほら、孔明に言われてるじゃないか。一国の主なんだから、動くのは
   領民も兵も皆動く時だってさ。
(劉)それは、孔明が犠牲は己一人でいいと決めているからだよ。
   ことによったら、あちらは敵地になるからな。

(曹)雲長(関羽)、言ったら聞かないって、それ玄徳軍に所属する全員
   だから。
(劉)あははははは。ともかく、ここまで来たら祈るしかないな。
(曹)で、江東だが。……言っていいか?
(劉)どうぞ、心置きなく。
(曹)間違い無く、初登場の孫権は俺よりも悪人にしか見えない
   孔明が江東の文官たちを論破出来なければ話は聞かないってところ
   まではともかく、「兄の尋問をどうかわすか見物だ」の挙句、
   笑い方が完全に悪役そのものだぞ。俺だって、さすがにあんな風には
   笑わない。
(劉)企んでいるような笑いなら、よくしてるけどね。それはそうと、
   孔明って「武術の心得があります」ってはったりじゃなかった
   んだな
。相手の剣をきっちり受け流してるよ。

(曹)あんな夜更けに他国で出歩いてるってあたりと、剣を受け流せる
   白羽扇って何で出来てるのか
というあたりが大変気になるんだが。
(劉)白羽扇の方はともかく、夜更けに出歩いたのは兄の諸葛謹殿の家を
   訪ねたかったんじゃないかな。ほら、騒ぎを聞きつけて出てきたよ。

(曹)弟の高笑いで呼び出されてくる兄……
(劉)剣が向いてたのに、さらりと「兄上、お久しぶりです」という余裕が
   あるのが孔明らしいね。

(曹)誉めるところか、そこ。兄の方が人が良さそうだが、弟の考えは
   読めるようだな。なんせ質問が「何を企んでいる?」だ。
(劉)企んでるわけ無いじゃないか。もちろん、論戦に負ける気はないけど
   もさ。孔明だって充分に人間らしいよ?「明日の論戦には、なにが
   あっても負けません。ですが、兄上が相手では、私も心が乱れます」
   って。

(曹)その後の「ですから、明日は欠席していただきます」って決めつけは
   どうなんだ。
(劉)それくらい強気という意思の現れだね。
(曹)孔明ならなんでもいいのか。ほら、兄に「思い上がるな」って
   言われた。
(劉)江東数百万なら、俺には数千万の民の期待がかかってるんだってさ。
   信念の強さなら、間違い無く孔明だろう。

(曹)押しの強さじゃないのか。結局、兄は急病を理由に欠席か。
(劉)これで孔明も思いきり論戦が出来るね。中身を見よとは、さすが
   だな。

(曹)屁理屈だろ、それ。
(劉)そうかなぁ。でも、どうして孫権殿に俺を討たせることにしたわけ?
   孔明も問うてるけど、俺も気になるな。

(曹)う、それは。
(劉)兵と民の信頼が恐ろしいんだ、ふぅん。
(曹)それは孔明の勝手な理論だろうが!
(劉)そうかな?ああ、上手く行くところだったのに、貞姫の邪魔が
   入ったよ。

(曹)孔明が呆然とするほど淑玲と似てるか?
(劉)それは設定だから、そういうことにしとかないと。それはそうと、
   いよいよ公瑾殿の登場だよ。

(曹)待て、いつ俺が二喬目当てで江東攻めを決めたと言った!
(劉)それも目的だろ。
(曹)勝利してからの話だ!
(劉)どっちにしろ、真実じゃないか。というわけで、開戦決定。
(曹)そんなに俺の百万の実力が見たけりゃ見せてやる。覚悟しとけよ。
(劉)荒れてたねぇ、机蹴ったりして。
(曹)それよりほら、周瑜が孔明に殺意抱いてるぞ。おやおや、玄徳まで
   呼び出す気か。これは一波乱あるな。
(劉)というあたりで、続きは次回。

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第三十一回 『謎の水上大要塞』

(曹)孔明と違って、兄(諸葛瑾)は素直だよなぁ。あっさりと周瑜に
   担がれて玄徳を呼びに行くとは。
(劉)必要とあらば、どこへでも行くぞ。
(曹)待て、孔明に止められていたの忘れてないか?
(劉)大丈夫だ。
(曹)その自信はどこから来るんだ。翼徳(張飛)に俺は多いに同情する
   ぞ。って、おい雲長(関羽)は勝平をすっかり手なづけてるな?!
   いつの間に小船なんぞ用意させてるんだ!
(劉)翼徳には俺の気持ちを考えろなんて止めてるところが侮れないよな。
(曹)とか言ってるうちに、案の定襲撃されてるじゃないか。玄徳の双剣、
   久しぶりに見た気がするぞ。
(劉)馬に乗っている時は片方しか使ってないことが多いからな。って、
   さすがに多勢に無勢かな。

(曹)あ、雲長が助けに入った。「釣りに出たら、面白い魚が釣れた」
   って、えらく嬉しそうだな、おい。
(劉)見込み通りだったからだろ。雲長が付いててくれるなら安心だな。
(曹)孔明も同時に襲撃されてるけど、あこぎだよなぁ。いきなり矢かよ。
(劉)孔明の対処は冷静だね、ちゃんと崖下に隠れた上で石を落として
   川に落ちたふりしてさ。

(曹)ヒトツだけ疑問なんだが、矢が刺さったのって背後からだったと
   思ったんだが?崖下で不機嫌そうに矢を抜いたのって、どう見ても
   前だよな?
(劉)そこ、ツッコミだしたら切り無いよ。子敬殿(魯粛)のとこに
   現れた時に、腕をつってるのはともかく、血が滲んでるのが肩
   じゃなくて二の腕になってるから。

(曹)にしても、玄徳マジックだよな。
(劉)何が?
(曹)孫権もすっかり玄徳に惚れ込んでるじゃないか。おかげで妙才
   (夏候淵)がとんだ道化だよ。
(劉)…………
(曹)おおい、玄徳?
(劉)あ?ああ、すまん。ちと気を取られてた。
(曹)孫権の妹とかいう貞姫か?すまん、俺にはどうしても淑玲と似てる
   ようには見えない。だいたい、美人じゃな(もご)
(劉)ここではそっくりなんだよ、そういうことにしとかないと。
(曹)了解。で、あれは嫌味なんだよな?「命がけで来たかいが
   ありました」
っての。
(劉)嫌味じゃないよ、事実だよ。孔明が怪我したってことの方が
   問題だが。

(曹)魯粛、苦しい言い訳を……「階段から転げ落ちた」って無理が
   ありすぎる。
(劉)思わず確認してしまったよ。「本当に階段から落ちたんだな?」
   って。

(曹)あの、「はいっ」っていうありえないくらい素直な孔明の返事と
   いい、お前らわかってて会話してるだろ。
(劉)あれくらいしとけば、子敬殿もそうそうは手出ししないよう公瑾殿
   (周瑜)を止めるだろ。

(曹)さてな、しっかし周瑜も生温いよなぁ。トドメ刺すならしっかり
   やれよ。おかげで隠してた水上大要塞見つかっちまったじゃないか。
   でも、舟遊びって周瑜の策だったんじゃないのか。
(劉)その後の、旧友と称してくる説客を逆用して蔡瑁を斬らせるって
   いうのもね。ま、それはご愛嬌ってことで。
   にしても、孟徳も凄いよな。なぜ孔明に見つかったとわかる。

(曹)孔明以外に、気付くヤツいないからだ。
(劉)なるほどね。かなり目の敵だよな。というあたりで続きは次回。

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第三十二回 『苦肉の計』

(曹)何が驚いたって、孔明も勝平と親しいらしいことだよ。上流から
   手紙流すから拾ってくれなんて頼んでるとは。
(劉)え?あれだけ雲長が気にかけてるんだ、周りだって親しいよ。
(曹)お前らのとこ、ホントほのぼのだよな。しかしさ、玄徳が柴桑に
   呼ばれた時には帰国しない理由も知らなかったし、こんな連絡
   取ってなかったろ?
(劉)まぁね。
(曹)玄徳、連絡しろと無理言っただろ。雲長(関羽)が勝平連れてった
   し、孔明はその時に手紙拾うことを頼めるよな。
(劉)東南風が吹く日には帰ると言っていたが、それまでが心配だから。
(曹)あ、そ。しかし、かなり詳細な連絡が入ってるな。
(劉)うん、孟徳が策にはまって蔡瑁を斬ったとかね。
(曹)うぐ。で、肝心の当人は何してるんだ。
(劉)公瑾殿(周瑜)と孔明は火攻めで一致したみたいだねぇ。手の平の
   字体がそれぞれに違うのが細かいよね。

(曹)また、周瑜は孔明に殺意を抱いてるようだが。
(劉)ああ、十万本の矢を狩りに行くんだね。孟徳自ら指示してくれて
   嬉しいなぁ。

(曹)嫌味ったらしいな、おい。
(劉)ごめんごめん、昨今命狙われたりしてすさんでたから(にこやか)。
   それはそうと、程仲徳初登場だね。

(曹)ああ、相変わらず信じられないことに許攸もいるんだがな。
(劉)苦肉の計を実際やれる公瑾殿と黄蓋殿も凄いけど、面白いのは
   孟徳の騙され方だと思うんだよね。投降の日付云々のやり取りは、
   いかにも孟徳がはまりそうだなぁと。

(曹)なに?
(劉)頭いいと思ってるのを逆手に取られてるっていうか、なぁ。
(曹)本人に同意を求めるな、本人に!
   ところで、孔明はなんでいつも自分の宿舎代わりの舟では、
   釣竿を持ってるんだ?
(劉)そりゃ、水辺の側にいるのを怪しまれないようにだろう。
(曹)あ?!まさか手紙を流してる?
(劉)江の水量もわかるしね。
(曹)くそ、それは前回の水上要塞の件だな。
(劉)さて、蒋幹がもう一度来たし、いよいよ登場。
(曹)む?あれは鳳雛先生では?!
(劉)というところで、続きは次回。

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