□□□ 第十巻 □□□
 
第三十七回 『王覇の業』

(曹)政略結婚の後半戦だな。いきなり周瑜の思う壺じゃないか、
   帰られたら困るって呉国太に泣きつかれて素直に従うなんて。
   今まで皆中してた矢が外しまくりなのが動揺っぷりを表してるな。
(劉)いつまで南徐にいるわけにもいかないんだけどな。
(曹)子龍の願いがむなしく恨み石に跳ね返されるのはぞっとしないな。
   あの石、望みが叶わないなら本当に切れんのか。
(劉)あ、孔明からの手紙だ!孟徳の大軍?!そりゃ大変だすぐ荊州に
   帰らないと!

(曹)待て、俺に大軍起こす余裕なんてまだ無いっての。
(劉)子龍(趙雲)がキレイに箱に並べられた錦の袋を見つめてた気も
   するけど、それはそれ。

(曹)わかって脱出じゃないだろうな!
(劉)三つ目の錦の袋で、ついてきた貞姫に全てを話す指示を出す前に
   謝るところが孔明らしいよな。

(曹)無視かよ。縄付の舟ってのは考えたな。凪でも動くというわけか。
(劉)孔明の策だよ。無事脱出、さすがだね。
(曹)周瑜は血は吐かなかったが、また倒れたな。毎度、血管が二、三本
   ずつ切れてる気がするが。
(劉)可能性はあるな。俺が無事戻ったとわかったなり、離間の計を施す
   あたりが孟徳らしいよ。

(曹)当然の策だろうが、にしても周瑜自らが動き出したか。病を押して
   とは鬼気迫るものがあるぞ。
   椅子に座ってるのがやっとなのに出陣か。
(劉)孟徳の計略だって気付いてるはずなのにね。死に焦ってとは、
   愚かな。

(曹)言い切るあたりが玄徳らしいと思うぞ。十万の兵で乗り込んで
   きたが、どうする?
(劉)十万の兵?ああ、戦う気がさらさら無いあの兵たちのこと?
   全部降伏したよ。もしかしたら、南郡から駆けつけた雲長(関羽)と
   翼徳(張飛)が怖かったのかもしれないけどね(にこり)。

(曹)あーあ、また血ぃ吐いて倒れちゃったじゃないか。
(劉)今までにまして酷い顔色だ。自業自得とはいえ、哀れではあるね。
(曹)「何故だ、何故、孔明などがこの世に生まれて来たのだ!儂、
   儂一人であったなら、すでに孫権様を天下人にお据え出来た
   ものを!」という台詞は周瑜に似合うが、内容は間違ってるぞ。
(劉)孟徳もそう甘くは無いからね。最後なんだから、大目に見て
   あげたら。

(曹)ものすごく冷静だな、おい。
(劉)死人に口無し、反論出来ないじゃないか。彼も一個の英雄ではあった
   んだから、冥福を祈ろうよ。というあたりで、続きは次回。


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第三十八回 『玄徳の失敗』

(劉)公瑾殿(周瑜)の星が落ちたね。
(曹)阿斗はなんでわかるんだよ。
(劉)さぁ、孔明の言う通り、なんか不思議な勘でもあるのかな。淑玲が
   ついててくれるのかもしれないね。

(曹)で、孔明は周瑜の弔問に行くって?
(劉)うん、やはり同じ参謀同士気持ちはわかるからって。
(曹)それは真理だな、相手に通じるかどうかはともかく。
(劉)今は東呉とぎくしゃくしてるわけにはいかないからな。孔明を
   信じるしかないだろう。

(曹)衷心からの弔辞とはわかるが、にしても役者だな、おい。
(劉)うちの軍特製の目薬があるんだ。
(曹)冗談に聞こえないからやめとけ。しかし、孔明が智にも情にも
   篤いだと?
(劉)あまり表情には出さないけど、いつも皆を良く気遣ってくれて
   いるよ。不器用なきらいはあるけどね。

(曹)しっかし孫権はダメダメだな。顔みただけで嫌気がさすとは。
   人間を見る眼がまるでなってない。ほれみろ、鳳雛先生に
   「やれやれ」などと言われてしまってるじゃないか。
(劉)鳳雛だと知っただけで頭から信じる誰かさんも微妙だと思うけど。
(曹)うるさい、ほっとけ。玄徳も人のこと言えんだろうが。
   江東出身と書いてある上、顔がマズイから県令とは。
(劉)孫権殿が採用しなかったくらいだからと、つい。
(曹)人を信じすぎてないか。己の目で判断すべきだろうが。
(劉)まま返す。
(曹)う。この件にはこれ以上触れん方向として、酒びたりとは、さすがの
   鳳雛先生も拗ねたか。
(劉)民が困ってるのは許しがたいな。翼徳!見てこい!
(曹)玄徳、今回はとことん人を見る目が無いな。孔明も言ってるが、
   翼徳の暴れ方に節度があるのは、玄徳の目前だけだぞ。
(劉)そうなのか?では公佑(孫乾)をつけよう。
(曹)お、初登場だな。翼徳と一緒なのは嫌なようだが。
(劉)公佑はなんだかんだでやってくれるよ。こういうことには慣れてる
   し適任だろう。

(曹)お白州の席順がわからん翼徳をからかったりして、公佑もそれなりに
   楽しんでるようだな。でも、いちいち公佑に訪ねてるあたり、
   結局のところ公佑一人で良かったんじゃないのか。
(劉)それを言ったらお終いだから。士元(ホウ統)の十人以上しゃべって
   も聞き取れるというのは便利な特技だねぇ。

(曹)あ、帰ってきた孔明に怒られてやんの。
(劉)別に怒ってないだろ。士元も俺が気付く方に賭けてくれたようだし。
(曹)なんにせよ、これで玄徳の元に伏龍鳳雛が揃ったか。脅威だな。
(劉)というところで、続きは次回。

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第三十九回 『父子再会』

(劉)荊州にも随分と人が揃ってきたな。雲長(関羽)の面接も堂に
   入ってきたし。

(曹)ふぅん、今度の男は勝傑だってさ。親を探してるとかいう勝平と同じ
   姓だな?
(劉)持っている錦の袋も一緒のようだね。やっと再会か、皆が涙するのも
   わかるよ。

(曹)感動だな(袖で目を覆う)。
(劉)それはそうと馬騰殿を呼び出すとはどういうつもりだ?まさか殺す
   気じゃ?

(曹)まさか、嫌だなぁ。逆らわずにいてくれれば、構わんさ。
(劉)どうだか、ひとまず士元に馬騰殿の様子を見に行ってもらおう。
(曹)ふぅん、護衛は翼徳と勝傑か。
(劉)馬騰殿は孟徳の側のと謀って挟み撃ちにする気か。士元は危惧して
   いるようだが……止めても無駄であるならば、黙っているしか
   あるまいな。

(曹)前に玄徳も言っていたが、ホント甘い連中ばかりだ。俺を殺そうと
   する人間に容赦する気は無いな。
(劉)当然の自衛だが、妙にキレイに話がばれたな?漏らした人間がいると
   しか……?

(曹)馬家では、お前らの方を疑っているようだが?
(劉)話した相手が俺たちだけだからな。
(曹)ほほう、孔明と士元が揉めてるじゃないか。仲が良さそうに見えて、
   互いに相手の才能が邪魔というところかな(にやり)。
   ほら、その後も勝傑を呼び出して士元の様子を聞いたり、孔明が
   何を尋ねたのか気にしたり。ああいう知者でも争い出すと醜いな。
(劉)それよりも勝傑は袁紹軍のではなく孟徳のところにいたらしい
   じゃないか?父と間者の噂の間で揺れている勝平が可哀相だよ。
   雲長(関羽)が聞いてやってるから、ひとまずは大丈夫かな。

(曹)いや、大丈夫じゃ無さそうだぞ。勝傑が、ほら。
(劉)見事に踊ってくれたな。孔明と士元が本当に仲違いするわけ無い
   じゃないか。

(曹)二人の軍師にはめられたか。それより雲長が誰より怒っているな。
(劉)ずっと勝平の話を聞いてやっていたから。うちのは皆、ずっと話を
   聞いていたからね、こいう結末は許せんさ。

(曹)偽者と言って自害したが、さて真実は闇の中だな。最後まで父と
   呼び続けた勝平が哀れだが……
(劉)勝傑を潜り込ませたのは孟徳だろうが。
   勝平は大丈夫だよ。雲長が父となってくれたから。

(曹)ほほう、関平になったわけか。……っておい、関平?!
(劉)そう、関平だよ(にこり)。オリジナルの展開だったけど、雲長の
   不器用な優しさがいいエピソードだったよね。

(曹)まぁな。雲長はいい人だよなぁ。
(劉)というところで、続きは次回。

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第四十回 『氷の城』

(曹)さて、俺もそろそろ再始動だ。まずは孫権を潰すぞ。
(劉)そうはさせない。孟起殿(馬超)に背後をついていただく。
(曹)フン、韓遂に命ずれば、馬超の首が都に届こうぞ。
(劉)残念だったな、韓遂は甥を選んだようだよ。
(曹)ちっ、行け、元譲(夏候惇)!
(劉)へーえ、初登場だ。で、両目があるじゃないか!
(曹)む。しかし元譲が負けるとはな。
(劉)家族を殺された怒りに燃えているからね。しかしあの白いマントが
   似合うな、孟起殿。孟徳の対抗するかの如くの赤いマントも妙に
   似合っているね、金の兜といい。

(曹)兜は久しぶり、いや初めてだったかもしれん。
(劉)が、とにもかくにも押されてるね。元譲殿はさすがだな、危ないと
   なったら孟徳を船に投げ込んでるよ。かばって矢が刺さり続けてる
   のにどかないし。

(曹)目が!
(劉)引き抜いたけど……さすがに食べなかったな。
(曹)子供向け番組だからな。
(劉)孟徳は砦を築けずに苦労してるみたいだね。
(曹)む、土に水が多くてな。石も多いしな。
(劉)孔明と士元の予測では、九月末を過ぎれば孟起殿の優位もどうなるか
   わからんそうだが。

(曹)雲を眺めたり、きのこ狩りしてたり、余裕だなお前ら。
(劉)久しぶりの傍観者だから。全く違う場所で同じ予測をする孔明と
   士元はさすがだね。

(曹)翼徳(張飛)に解説してくれる分、士元の方が親切だろ。
(劉)先に言っちゃったら士元の出番が減っちゃうだろうが。九月になれば
   北は氷が張り始める、か。なるほど、水の多い土も凍るわけだな。

(曹)そうだ、氷の城だ。
(劉)思いついたの孟徳じゃないだろ。
(曹)ああ、そういやあの左慈とかいうのは何者だ?
(劉)さてな、嫌な感じなのは確かだ。
(曹)ひとまずは姿を消したし、後回しだな。
(劉)まだ、孟徳と孟起殿の勝負は続く、というところで続きは次回。

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