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■■■花も実もある■■■
「「合コン?」」
二人の声が揃ったのに、周囲はどっと笑い出す。 一人は、ひょろりとしていて、もう一人は、がっしりとしているのだが、どちらも不思議そうな表情だ。 「それって、何?」 すぐに、興味深そうに問い返したのはひょろりとした方で、アファルイオ王家の第一継承者の孫文哉。 まだ、不思議そうな表情のままのがっしりしている方は、ルシュテット皇太子のフリードリヒ・コンラート・ホーエンツォレルンだ。 二人共の身分は、入学式当日に思い切り学長が誇らしげに喧伝したせいで、全校生徒にバレたわけだが、一年過ごすうちに、そういうのに関係なく友人も出来て周囲は賑やかだ。 「んー、ま、簡単に言っちゃえば、女の子と飲もうって会だな。もちろん、カラオケとかありだけど」 一人がずさんな説明をしたのに、もう一人がツッコむ。 「それじゃ、普通の飲み会と何が違うのかわからないだろうが」 「こっちはヤロウを何人か集めるわけよ、今回は四人な、で、俺の友達って、女なんだけど、そいつが俺らの知らない女の子をあわせて四人集めてくるわけさ」 と、更に一人が説明し始めた後を、ツッコんだ一人が引き継ぐ。 「で、友達増やそうってわけだ」 「友達じゃねぇだろうが」 最初に言い出したのが、鋭いツッコミを入れる。 「まぁなぁ、文哉にはオススメ出来ないな。故郷で待ってるカワイイイ彼女を泣かせるわけにはいかないからなぁ」 「ようは、彼女をつくりにいこうってわけか」 端的に言ってのけたフリードリヒに、次々とツッコミが入る。 「だーかーら、そういうことははっきり言わない!」 「がっついてるみたいじゃん、俺ら」 「つか、がっついてるんですが」 おかしそうに肩をすくめながら、文哉はフリードリヒの肩を軽く叩く。 「いいじゃないか、友達増やしに行くって思えば。まぁ、俺は遠慮しておくけれども」 彼女持ちの人間が参加するコトだって多々あるが、第一継承者の立場でそれをやると、悪意を持った人間にどんな後ろ指を指されるかわかったものではない。 そういうあたりは、微妙に行動範囲を狭めるのだが、立場は立場だ。 周囲も理解してくれていて、さらりと流してくれる。 「というわけで、フリードリヒは来るってことで。もう人数入れたからな、ドタキャン無しだぜ!」 「待て、いつだか聞いてない」 「今晩五時半集合!」 勢いよく腕を突き上げると、言い出した一人が携帯を取り出して離れていく。相手の女の子に連絡を取るらしい。 にやり、と一人が笑う。 「モテるぞー、フリードリヒ」 「なんでだ?」 相変わらず、怪訝そうな顔つきでフリードリヒが尋ねる。 からりとした笑い声をたてたのは、文哉だ。 「そりゃ、皇太子なんて珍しい生き物と話してみたいってのは人情だろ」 「そうなんだよな、どうしても興味あるってのはしょうがない」 一人が言って、もう一人も頷いて笑う。 自分とて王位第一継承者のくせに、文哉はまるで他人事のように一緒になって笑っている。 大国と呼ばれる四国のうち、王室が実質的に政治を動かしているのはルシュテットとアファルイオなので、幼い頃から、比較的行き来は頻繁だった。 フリードリヒにとって話しやすい相手ではあったけれど、これほどまでに誰とでも馴染めるとは思ってもいなかった。 文哉がいなければ、これほどまでに友人が出来ることなど無かったろうと確信している。 合コンとやらも面白そうではあるが、文哉がいないとなると、どうなるやらと微かな不安がよぎる。 「大丈夫だって、いつも通りにしてればいいんだよ。それでもイイって思う人は絶対にいるんだからさ」 文哉は、さらり、と言ってのける。 感情を表さぬように訓練されているフリードリヒの、ほんの少しの変化に気付いたらしい。 フリードリヒは、思わず苦笑する。 「確かに、作ったって意味がないな」 「おお?なんだ、初めての合コンに緊張?」 電話を終えて戻ってきた一人が、笑顔で覗き込む。フリードリヒも笑顔を返す。 「そうみたいだ、この程度で緊張するとは、まだまだ修行が足りない」 「そうそう、それっくらいの勢いで!」 一人が言えば、もう一人も笑う。 「けっこう本気モードか?!」 皆して大笑いしながら、フリードリヒは思う。 他国で暮らすということが、自分にとって貴重な経験となるだろうと思ったから、留学を決意した。 でも、あの頃想像していた以上に、ここで過ごした日々は大事なモノになるだろう。 初めての合コンで、フリードリヒは、リスティアで最初に心を奪われた花と同じ名を持つ女性と出会う。 〜fin. 2004.02.18 A Midsummer Night's Labyrinth 〜Wonderful school life?!〜
■ postscript
迷宮完結リクもの。 麗花の父王とフランツの父王の学生時代で、出来ればフランツの母親も絡んでいれば、ということで、このようになました。 母、登場シーンなくてすみません。 □ 月光楽園 月亮 □ Copyright Yueliang All Right Reserved. □ |