『 RPG? RESTART! 』 勢い良く叩かれる扉に、亮は首を傾げつつ開く。 「ごめん、やられたッ!」 いきなり拝まれて、さすがに亮もいくらか戸惑い気味に問いを発する。 「なにをやられたんです?」 麗花は、相変わらず拝んだポーズのまま、一気に言う。 「幻想誘発素子、俊に持ってかれた!」 「マジかよ」 どえらい物音に、何事かと顔を出した忍が、げ、という顔つきになる。 幻想誘発素子を持ち出した、となれば、目的はヒトツしかない。ゲーム機のドリームキューブと入れ替えて、自分の意思が最大限に影響するゲーム環境を作り出す為に決まっている。 しかも、昼間に罰ゲーム付を言い出しておいて、言い出した張本人が散々な眼にあってしまい、相当おかんむりだったのだ。 「ホントごめん、前にあれだけ脅しといたから、油断した」 「いや、麗花が悪いわけじゃないよ。で、もう閉じこもっているってわけか」 視線を俊の部屋の方へとやる。 がっちりと閉ざされている雰囲気からして、鍵をかけているのに違いない。 三人は、誰からとも無く顔を見合わせる。 かなりな確率で、ゲームに飲み込まれて寝てしまうに違いない。そうなったら、後は最悪だ。 周囲への影響力の強い幻想誘発素子の影響で、他の五人までもが俊影響下のゲーム世界で一晩中四苦八苦になるに決まっている。 「どうしよ、徹夜しないとダメになっちゃった?」 寝た途端に巻き込まれるのは目に見えている。 いくらか焦り気味の麗花へと、亮は笑みを向ける。 穏やかで優しいものではない。『軍師な』笑みだ。 その笑みを見て、麗花もいつも通りの笑みを返す。亮に確実な考えがある、と理解したのだ。 「で?」 忍の簡単な問いに、亮は口を開く。 「先ずは、ジョーと須于に居間に来るよう伝えてください。短期決戦で行きましょう」 「諾!」 走り降りていく麗花から、忍へと視線を戻した亮の笑みが、少し大きくなる。 「龍牙、持って降りてください」 「了解」 忍も、にやり、と笑う。 麗花の話を聞いて、察しはつけたのだろう。 居間に来たジョーもカリエ777を手にしている。 「目には目を、旧文明産物には旧文明産物をってね」 にやり、と麗花が言い、くすり、と須于が笑う。 ジョーと忍が、それぞれの得物を軽くゆすって見せたのに、亮も笑みを浮かべる。 「先ずは、俊のお望みどおり、ゲーム世界へお邪魔させていただきます。ただし、その後の展開はこちらの思惑に従っていただきます、いいですか?」 それから十分後。 「待て、なんでリプレイ出来ねぇんだよ!」 一人、ゲームオーバーの場なる場所へと隔離された俊の叫びが聞こえておりましたとさ。 2004.03.17 A Midsummer Night's Labyrinth 〜RPG? RESTART!〜 |