第二十五回 『水魚の交わり』
(曹)ほほう、いよいよ孫権が動き出したか。ひ弱なぼんぼんかと思って
いたら、劉埼も案外やるな。見込みは甘いとしかいいようがないが。
周瑜がいなかったら、嫡子なんて無視されて力づくで江夏は
踏み潰されていたぞ。
(劉)病床とはいえ劉表健在だからどうだったかな。ともかく、やっと
孔明が劉埼殿を江夏の守りに付かせたのかわかったよ。これを読んで
いたんだな。
(曹)周瑜はなかなか機を見るに敏の男だからな。しっかしお前のとこの
兵、凄いな。専属の将兵二千と民兵三千で五千だと?
しかも、もめまくってるぞ。
(劉)雲長(関羽)にも信用ならんと言われてるしな(苦笑)。
(曹)子龍(趙雲)が聞いてきた悪い噂ばかりの中身が微妙に気になるが。
(劉)人間、嫌いだと思えばどんなことでも悪く取るさ。
(曹)まぁいい、どのみち今のうち潰させてもらうからな。
(劉)妙才殿(夏侯淵)なんだな、そういえば。
(曹)元譲(夏候惇)は登場しとらんのでな。
(劉)戦場は博望破だ。
(曹)ん?その手前で落石は使わんのか?
(劉)それ、翼徳(張飛)でも思いつくから。
(曹)今までの玄徳軍なら、絶対ソレだと思ったがな。随分と軍議も
揉めてるなぁ。
(劉)剣は貸したが、まさか翼徳の一撃を受け流すとは思わなかったな。
(曹)酒でも飲んで待ってるのか、ってあたりが翼徳らしいな。
(劉)「勝利の祝い酒を飲むのはあなた方です」という孔明の返しは
良かったね。
(曹)で、後は孔明の思うがまま、か。
(劉)作戦通りにことが進むたびに、誰もがいちいち確認してるのが
信用無いなによりの証拠だね(苦笑)。翼徳なんて、民兵たちが
「敵を見るな」と言われてると聞いて「話にならん」だもんな。
(曹)戦の直前に厠行きたがるような連中と命を共にしろと言われたら
俺でも言う。
(劉)翼徳の危機に、皆が突進するのを見て信じられなかったようだがな。
(曹)ともかくも、妙才は大敗だな。
(劉)こちらは小気味いいほどの大勝だ。久しぶりの祝勝会だよ。
(曹)あれ?翼徳は?
(劉)おや、勝平もあんなにはしゃいでるっていうのに姿が見えんな。
(曹)あ、その勝平って子はいつから来たんだ?水鏡先生のとこにいた
童だろうが。
(劉)こちらは小気味いいほどの大勝だ。久しぶりの祝勝会だよ。
(曹)あれ?翼徳は?
(劉)ああ、父親が戦に行ってしまったきり帰ってこなくてね、探してる
んだよ。俺のとこなら、兵が集まるだろ?
(曹)ははぁ、えらく雲長に懐いてるな。
(劉)なにかと気にかけてるからじゃないかな。ま、うちは収まるとこに
収まったってとこかな、翼徳と孔明も理解しあってくれたようだし。
(曹)翼徳は民兵の墓を作ってたのか。ああいう単純なところが羨ましい。
(劉)というあたりで、続きは次回。