第三十八回 『玄徳の失敗』
(劉)公瑾殿(周瑜)の星が落ちたね。
(曹)阿斗はなんでわかるんだよ。
(劉)さぁ、孔明の言う通り、なんか不思議な勘でもあるのかな。淑玲が
ついててくれるのかもしれないね。
(曹)で、孔明は周瑜の弔問に行くって?
(劉)うん、やはり同じ参謀同士気持ちはわかるからって。
(曹)それは真理だな、相手に通じるかどうかはともかく。
(劉)今は東呉とぎくしゃくしてるわけにはいかないからな。孔明を
信じるしかないだろう。
(曹)衷心からの弔辞とはわかるが、にしても役者だな、おい。
(劉)うちの軍特製の目薬があるんだ。
(曹)冗談に聞こえないからやめとけ。しかし、孔明が智にも情にも
篤いだと?
(劉)あまり表情には出さないけど、いつも皆を良く気遣ってくれて
いるよ。不器用なきらいはあるけどね。
(曹)しっかし孫権はダメダメだな。顔みただけで嫌気がさすとは。
人間を見る眼がまるでなってない。ほれみろ、鳳雛先生に
「やれやれ」などと言われてしまってるじゃないか。
(劉)鳳雛だと知っただけで頭から信じる誰かさんも微妙だと思うけど。
(曹)うるさい、ほっとけ。玄徳も人のこと言えんだろうが。
江東出身と書いてある上、顔がマズイから県令とは。
(劉)孫権殿が採用しなかったくらいだからと、つい。
(曹)人を信じすぎてないか。己の目で判断すべきだろうが。
(劉)まま返す。
(曹)う。この件にはこれ以上触れん方向として、酒びたりとは、さすがの
鳳雛先生も拗ねたか。
(劉)民が困ってるのは許しがたいな。翼徳!見てこい!
(曹)玄徳、今回はとことん人を見る目が無いな。孔明も言ってるが、
翼徳の暴れ方に節度があるのは、玄徳の目前だけだぞ。
(劉)そうなのか?では公佑(孫乾)をつけよう。
(曹)お、初登場だな。翼徳と一緒なのは嫌なようだが。
(劉)公佑はなんだかんだでやってくれるよ。こういうことには慣れてる
し適任だろう。
(曹)お白州の席順がわからん翼徳をからかったりして、公佑もそれなりに
楽しんでるようだな。でも、いちいち公佑に訪ねてるあたり、
結局のところ公佑一人で良かったんじゃないのか。
(劉)それを言ったらお終いだから。士元(ホウ統)の十人以上しゃべって
も聞き取れるというのは便利な特技だねぇ。
(曹)あ、帰ってきた孔明に怒られてやんの。
(劉)別に怒ってないだろ。士元も俺が気付く方に賭けてくれたようだし。
(曹)なんにせよ、これで玄徳の元に伏龍鳳雛が揃ったか。脅威だな。
(劉)というところで、続きは次回。