第五十八回 『関羽死す』
(劉)住民たちもさることながら、胡班が助けに現れるとはね。
(曹)荊州の人間は玄徳軍贔屓だからな。胡班といえば、まさか俺のところ
から玄徳のところへと千里駆けた時の?
(劉)そう、その胡班。恩義を忘れずに駆けつけてくれたそうだよ。
(曹)で、麦城へ篭城か。攻め手の呂蒙たちは包囲戦で消耗を待つ気
らしいが。
(劉)ああ、援軍を求める使者が上手く俺のところに辿りつかんらしいな。
困ったものだが……
(曹)孫権は、降参の使者に諸葛瑾を選んだようだな。
(劉)少しでも感情が和らぐようにというのもあるが、生きて帰れる使者は
彼しかいないだろう。
(曹)だが、諸葛瑾はバカではないぞ。ほら、食べ物も出る不思議な井戸を
見つかったじゃないか。
(劉)周囲の住民達のひそやかな好意だったが……
(曹)いいのか、雲長?「運命だ」で片付けられることではないぞ。
(劉)子瑜殿は賢いだけでは無い方だよ。
(曹)呂蒙に、隠したか。おお、援軍の使者もどうにか玄徳の所に
辿りついたな。
(劉)すぐに援軍だ!
(曹)プライドが高いから、勝手に送れば怒るってずっと気にしてた
もんなぁ(涙目)。
(劉)んな顔になるくらいなら、攻めるなっての。
(曹)それはそれ、これはこれとしか……それよりも、便利な井戸が呂蒙に
見つかったようだぞ。
(劉)使えなくするだけならともかく、民を殺して見せしめに城に
連れてくるとは!
(曹)民達と引き換えに降伏しろ、か。雲長にはトドメだな……
(劉)…………
(曹)あの踏みしめてく雪の音は忘れられまい。
(劉)…………
(曹)って、おい、呂蒙!騙まし討ちなのか?!民も雲長も殺す気だった
と?!ああ、胡班が庇って斬られたか。
(劉)……関平が使者に立った後で良かったよ。
(曹)そういう問題じゃないだろ?!なんだよ、あの勝ち誇った笑いは?!
俺が、俺が切り捨ててくれる!
(劉)……子瑜殿が義を守って便利な井戸のことを告げたわけではないこと
を、雲長が知ることが出来て良かった。
(曹)玄徳、なに落ち着いてやがる!雲長が、たった一人、呪ってやる
とまで!
(劉)わかってるよ(にこり)。雲長が殺されたってことは、騙まし討ち
だってことは、嫌というほどにね。
(曹)…………
(劉)正々堂々の戦いで無く、あんな姑息な騙まし討ちとはね。
(曹)くそ、まさかこんな結末とは!
(劉)……というところで、続きは次回。