□ お兄ちゃんは寝ている Ver.G&A
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ラウンジへとやってきたゴードンは、きら、と目を輝かせる。
珍しく、ソファのスコットは後姿のままだ。敏感な彼は、いつもならすぐに振り返るのに。どうせ集中しているのは仕事関連の何かだろうが、誰とも通信していないので緊急ではない。
ちょっとした驚きも生活のうるおいだよね、などと口元の笑みを深めつつ、ゴードンはそろそろと青い背に近付いていく。
が、あまりに全く身動きしない様子のスコットに、ソファの真後ろに来るころには首を傾げてしまっている。
そうっと覗いてみると。
なるほどね、寝ちゃってるのか。
声には出さずに思う。
早朝のレスキューを終え、帰宅後もジョンがトレースし続けている案件があるとかでここで構えているうちに疲れが出たのだろう。
小さくため息をついたゴードンは、さて、と考える。
こんなところでスコットが寝こけているのは、大変にを何度も重ねてしまうほどに珍しい。せっかくなら心行くまで寝てもらいたいところだ。
どうせ、起こしたらそのまま待機に戻ってしまうのだろうから。
人の気配に敏いスコットのことだ、この人通りの多いラウンジで静かに眠るというのは、なかなかにハードルが高い。
唇を尖らせて考えを巡らせていたゴードンは、やがて、ニッと笑みを浮かべる。

ややして、ラウンジに顔を出したアランは、目を見開く。
なんせ、そこら中に目に痛いくらいな黄色いテープが張り巡らされており、ゴシック体で黒々と「POLCE LINE DO NOT CROSS」と書かれている。確かに、このラウンジで殺人事件でもあったかのようだ。
足音に気付いたのだろう、ゴードンがにょっきりとソファの向こうから顔を出す。
文句のヒトツも言ってやろうと頬をふくらましたアランに、ゴードンは、にやり、と指を一本、口の前に立ててみせつつ手招く。
何がなんだかわからないだろうに、一応は足音も声も秘めつつテープをかいくぐって、そうっと近付いてくるあたりがアランらしい。
が、アランもソファの中を覗き込んで、スコットが眠っているのを目にした途端に状況を把握したらしい。大きくこくこくと頷いているのは、テープを張り巡らせたのは正解、と言いたいらしい。
声を潜めたまま、そっとゴードンは告げる。
「アラン刑事、引き続き現場保存を頼む」
大真面目な顔で敬礼しつつ頷くアランを残し、ゴードンは慎重にソファを離れる。

苦労して戻ってくると、寝るのが大好きなアランも、スコットの近くで丸くなって一緒になって眠っている。
その太平楽な寝顔に、こみ上げる笑いを押し殺しつつ持ってきた毛布をまずはスコットに、それからアランにとかけてやる。
これで、風邪をひくこともあるまい。
残った毛布をかぶって、ゴードンもアランとは反対側のスコットの隣に横になる。
そのうち、おばあちゃんかバージルに怒られることになるのだろうけど、今はゆっくりと静かに眠る時間だ。
満足に微笑みつつ、ゴードンも瞼を閉じる。



2016.01.07 Keep out!

■ postscript

よりみちさんのTLネタより。
よりみちさん、お誕生日おめでとうございます!!

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