□ 深夜カルテット
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ぷうっと頬を膨らませたアランは、言い捨てるように言いやる。
「どーせ、僕はちゃんと演奏出来ないようっだ!だからってさ、そんなからかうことないだろ、どうせ、僕ら揃ったって音楽はなんも出来ないじゃん、バージルくらいじゃん、ちゃんとピアノ出来るのさ」
兄たち四人が目を細めたところで気付くべきだったのだ。
が、アランは、さらに言い募る。
「僕がうなっちゃうような音楽、兄さんたちが出来るってなら別だけど」
つい、と口の端を上げたのが五号からホロ状態で聞いていたジョンだったことで、アランは初めて危機感を覚える。

それから三十分もたたぬうちに、だ。
ラウンジのピアノの前にはバージルが腰かけ、その側にはコントラバスを手ににっこりとほほ笑むジョン、どこに仕舞ってあったのかと聞きたいドラムセットの前にはゴードン、そしてスコットの首にはアルトサックス。
「いやあ、まさかコレがまた出来ると思わなかったねー」
嬉しそうにゴードンが笑み崩れ、ジョンがにこり、と笑みを深める。
「そうだね、アランのお蔭かな、ね、スコット」
「久しぶりだから、お手柔らかにな」
スコットも笑い返す。
に、とバージルも笑う。
「じゃ、いくか」
独特のピアノのリズムにびく、とアランは肩を揺らす。
聞き慣れない、5/4拍子。
呼応するサックスと、ベースと、ドラムと。
メロディが奏でられてしまえば、テイクファイブという曲だと気付くけれど。
ああもう、悔しいくらいにカッコ良い。
兄たちが、兄でないような。
もちろん、ココに加わりたいと思ってしまう。
練習するよ、と宣言するのは簡単なことだけれど。今は、この素晴らしい演奏に耳を傾けていたくて、アランは目を細める。



2015.12.28

■ postscript

トリオ書きますとかと、Luceさんにキャラ指定してもらって仕上がったら四人が演奏してたでござる。

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