□ あの人は光だから
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「おっけ、レスキュー完了だよ。全員無事」
ゴードンが通信を入れると、すぐに事務的なジョンの応えが返る。
『FAB』
「おやおや、それだけ?冷たいねぇ、けっこう厳しいヤツだったと思うんだけど?」
わざと目を細めてやれば、実に嫌そうにジョンの眉間にしわが寄る。
『ゴードンの担当分はそうだろうさ』
「ふうん、スコットがまーた無理してるね?」
口の端を持ち上げてやれば、苦虫を噛み潰したとはまさにこのことだ、という顔だ。
『わかっているのなら』
「わかってるから言ってるんでしょ、ほら、スコットが戻るまでに笑いなよ」
『笑う?!』
ジョンがカッとなった顔など、そうそうは拝めまい。顔が緩み切りそうになるのを、かろうじて奥歯を噛みしめて我慢する。
「どんなレスキューで出たのかは僕も知ってる。だから、今日のは笑ってやんなきゃ。スコットじゃなきゃ出来なかった、ありがとうって。ね?そうでしょ?」
軽く三十秒は黙り込んでいた後。
ジョンは、吐き捨てるように返してくる。
『ああ、確かに。スコットにしか出来ないな』
そう、そうと知っていて、無理すると知っていて采配したのもジョンなのだ。だから、彼は笑う必要がある。
「だろ?あと少しなんだろうから、スコットには笑ってよ?じゃ」
あっさりと引く言葉を告げれば、少し気まずそうな顔だ。
『ああ、お疲れ、ゴードン。安心して任せられた』
「そりゃ光栄」
に、と、ゴードンは笑い返す。



2016.01.23

■ postscript

あすなろさんより、GさんとJさんで。リクありがとうございました!

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