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「MAX、どうしたの?」
ブレインズが声をかければ、彼の忠実なるメカはきゅい、と視線を奥へとやる。
「スコット?」
「ブレインズ、お願いがあるんだけどさ」
「お願い?」
きょと、と目を瞬かせれば、スコットは頷いて手にしているジェットパックを差し出す。
「コレ、もう少しスピード上がらないか?」
「んー、そうすると火力がねぇ?」
「もちろん、火力はいるだろうさ。懸念はわかってる、ちょっと角度変えたらどうかな?耐熱はイケるだろ」
「まぁねぇ」
メカ的なことに詳しいバージル相手なら、むしろ一緒に開発してこうかと言うところだけどスコットの場合は厄介だ。
己に必要な情報だけは確実に集めてくる。そして、他にプロフェッショナルがいると判断すれば、あっさりと投げてみせる。特にブレインズ相手には。
「あと少しでいいから、頼むよ」
片目をつむり、眉を下げつつ拝んでみせる姿勢は丁重だが、今や実質のリーダーでもある彼の言葉はある意味命令でもある。
「それ、絶対に必要?」
ブレインズは、眼鏡の奥からじっと見つめつつ尋ねる。
精一杯の抵抗だったのに、答えはあっさりと返る。
「ああ、絶対だ」
ブレインズ以上に、まっすぐな視線。
ああ、逆らえない。この改良は、スコットを余計に無理させると技術バカの自覚があるブレインズにもわかることなのに。
止められない、止める術が無い。
少しだけ、視線を落とす。
「そう、わかった。急いでやるよ」
「ありがとう、待ってる」
待ってる、の期間がASAPなのはわかっている。
「ああ」
頷き返しながら、他の兄弟たちがどうか歯止めになってくれと祈る。



2016.01.23

■ postscript

あすかさんより、Bさんとお兄ちゃん。リクエストありがとうございました!

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