ボクは、おかあさんをしらない。
おとうさんも、もちろん、しらない。
さいしょにおもったのは、おなかすいた、と、のどがいたい、だった。
それから、こえがきこえた。
「だいじょうぶ、ぼくがぜったいに、まもるから。だから、もうすこしだけ、がんばって」
とってもやさしいこえだったし、からだがあったかくなったから、うん、ってうなずいたんだ。

そうしたら、ほんとうに、のどがいたくなくなった。おなかも、いっぱいになった。
ひと、っていうのに、たすけてもらったんだって。
「スコットのおかげだぞ、感謝しろよ」
って、きんぱつに、とってもキレイなみどりのめの、そのひとは、ボクのはなをつつく。
うん、しってるよ。
たくさんたくさん、おにいちゃんとボクのことを、いっしょにめんどうみてくれるひと、さがしたんだよね。
しってるよ、だから、ひきうけてくれて、このひとにも、とってもとっても、ありがとうっておもってる。
ボクのことは、からかうみたいに、はなをつつくけど、なでるては、とってもやさしい。
だから、ボクもめをほそーくして、まるくなるんだ。
ありがとう、って。
そうしてると、カサカサっておとがして、ほら。
あ、ちかくにのってくれた。ボクの、だいじなだいじな、だれよりもだいじな、おにいちゃん。
「おかえり、スコット」
ひとも、とってもやさしいこえをだす。
うんうん、わかるなぁ。
おにいちゃんは、とってもキレイで、カッコよくって、とってもやさしい。この、とってもやさしいけど、さみしいひとにも、とってもやさしい。
「にゃあああ」
って、とってもやわらかいこえでこたえて（ボク、いっしょのねこだからわかるよ、こころからのかんしゃのしるし、なんだ）、すううっとすりよって、それから、ボクのところにもきてくれる。
やさしくなめてくれるのが、とってもきもちいい。
うん、このまま、きょうはねちゃえ。
ねぇ、だいじなだいすきな、スコットおにいちゃん。
ボク、いつか、おにいちゃんも、やさしいこのひともまもれるくらいに、つよくなりたいな。



2016.01.28