□ 宇宙(そら)から見る星
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五号での僕の休憩場所に立ったスコットは、目を細める。
「へぇ、本当にきれいに見えるものだな」
その視線の先には、陽に明るくなっていく地球だ。ジョンもいつも見つめて、目を細めてはいるけれど。
それは、実のところ、スコットがトレーシー島にいてくれるからこそ、だ。宇宙でのメンテナンスにかけてはバージルよりよほど得意なスコットは、五号の大規模メンテナンスの為にこちらに来てくれている。
「ね、スコット、地球もいいけどね」
なんとなく落ち着かなくて、ジョンは空を指す。
「いつも相談してることなんだけど」
「ああ、観測結果の話だな」
にこり、と笑ってくれる。
「そうか、ここからならジョンがいつも観察してる空も見えるんだな、楽しみだ、出来るだけメンテナンスを頑張って、そっちも見てみたいよ」
え、と、ジョンは思わず瞬く。
ワーカーホリックとはスコットの為にあるような言葉だ。可能な限り五号のメンテナンスが早く終われば、すぐにも地上に帰ると思ったのに。
「帰らない、の?」
「ジョンが邪魔じゃないなら、せっかくだからいつも観測してる空を見てみたいな。手配はしてきたし」
「もちろん、僕も見せたいよ!」
思わず強く返して、はた、と我に返る。
「……あ、その、ほら、その方が相談もしやすいし」
そう、続ければスコットの笑みは大きくなる。
「そうか、いていいのか、嬉しいね」
ああもう、ホントにこの兄は。
ジョンも、笑みを返す。
「うん、地上じゃ絶対に見られない空だからさ、見ていってよ」
心では、あの空をスコットと共有出来るなんて、これほど幸せなことはない、と思うけれど、もちろん口には出来るはずもない。
ただ、この幸せを噛みしめて笑みを浮かべるばかりだ。



2016.01.28

■ postscript

金具さんより、T島以外にいるお兄ちゃんとJさん。ということで五号にしてみました。リクエストありがとうございました!

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