□ おとなのとくべつ
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某東の島国で行われたGDFの会合に呼び出されていたスコットが帰宅したのを、満面の笑顔で迎えたのはゴードンだ。
「おっかえりー、スコット。お疲れ様ー、でもって、ありがとー」
悪びれもせずに両手を出すのへと、笑いながらスコットも手に提げていた袋を差し出す。
「ただいま、はい、頼まれモノ」
すぐに袋から中身を取り出したゴードンは、笑みを深める。
「さっすがスコット、注文通り!」
「え、おとなのふりかけ……?」
スコットの帰宅予告からこのかた、異様にご機嫌なゴードンがなんとなく気になっていたアランは、きょと、と目を瞬かせる。
「そ、僕、最近オムスビにハマっててさ、このふりかけで作るとサイコーなんだよ」
それで、珍しくキッチンに立っていたのか、とアランは納得して頷き返す。
ゴードンはご機嫌でスコットをみやる。
「帰ってくるって教えてくれたから、ご飯炊き立て出来てるよ、食べるでしょ?」
「ああ、出来るだけ急いだからな、腹ペコだ」
にこり、と笑う兄に、ゴードンは大きく頷く。
「まっかせて、美味しいの作るよー。アランも食べる?」
問われたアランは、ひどく困惑の顔つきだ。
「あれ、オムスビ嫌いだったっけ?」
思わず、ゴードンが問い返すくらいには。
が、慌てたようにアランは首を横に振る。
「ううん、そうじゃないよ!オムスビは大好き!ゴードンが作れるようになってたなんて知らなかったし、きっと美味しいんだろうなって」
「ん、お米から炊飯器からこだわっちゃってるからね、イケるよ?」
にんまりと笑うゴードンを見て、アランは眉を下げてしまう。
「でも、ほら、おとなのふりかけで作るんでしょ?それって、大人しか食べられないじゃない?」
ちょうど愛機のメンテナンスを終えて上がってきたバージルが、妙な顔になる。
「おい、アラン、おとなのふりかけってのは」
単なる商品名だ、という言葉は、たまたま一緒に上がってきたケーヨの、実にタイミングの良い鳩尾への一発で沈められる。
腹を抱えつつも懲りずに口を開こうとしたバージルの視界に入ったのは、絶対零度の視線を送ってくるゴードンとスコットだ。
これ、あかんヤツ、と悟って素直に己の腹の痛みに向き合うことにしたバージルは置いておいて、だ。
にっこりと笑みを深めたのはゴードンだ。
「ああ、そのことね。確かにおとなのふりかけは大人にだけ与えられた特権だよね。でも大丈夫、その大人の許可があれば食べられるんだよ!」
じゃじゃーんというようにスコットを見やったゴードンに、つられるように顔を向けたアランの視線は期待と不安に満ちている。
にこり、と兄らしい笑みをたたえたスコットが返す。
「もちろん、アランも一緒に食べよう」
「ありがとう、スコット!ゴードン、僕のもお願い!」
満面の笑みで頼むアランに、ゴードンもあっさりと頷き、ケーヨもにっこりと返す。
「良かったわねぇ、スコットがいる時で」
「うん!色々と味があって美味しそうだし、楽しみ!」
「ケーヨもどう?」
「もちろん、いただくわ」
にこやかに話が進む中、僕も食べたい、の一言が痛みのあまり言えないままにバージルが床に転がっているのでしたとさ。



2016.03.04

■ postscript

気まぐれに「おとなのふりかけは大人になってからでないと食べられないと思ってるのは?」アンケートでアーちゃんが一位でした記念。

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