□ 高く速く
[ Index ]

操るメカの役目が違うのだから、当然なのだけど。
いつもいつも、一号は先に行く。
高い場所を、気持ちのいいくらいな軌跡を描きながら。
それは、いつだって兄弟たちの先を行く、いや、行ってしまう兄そのものに見えて。
この先に待っているレスキューを冷静にこなさなくてはいけないのに、バージルのどこかがきゅうっと痛くなるのだ。
自分はその命さえどうでもいいかのようにレスキューに飛び込んでいくのに、自分たちにはけしてソレを許さない。
それを告げる瞬間の目を、バージルは知っている。
二号と同じく、馬力でなら兄をとうに凌駕していることを知っている。だが、スピードでは到底敵わない。
いつもいつもいつも。
兄は一人で背負って、一号以上に遠くへ行こうとする。
放射線濃度の高い洞窟で、どうにか転落する兄とレスキュー対象を拾いはしたけれど。
「ありがとう」
と、兄は笑ったけれど。
ああ、後、何回、間に合うことが出来るのだろう。
少しずつ、少しずつ。
速度と高度を上げていく、一号と兄に。



2016.03.08

■ postscript

なんとなくVさんは黙ってみてるイメージだった。

[ Index ]