□ だって主役だから
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GDFとの打ち合わせの為に飛び立った1号の機影が遠ざかるのを見送ってから、ラウンジに残った3人は勢いよく顔を見合わせる。
「で、ケーキなんだけど!」
いきなり本題に入ったのはゴードンだ。
「絶対に派手なのがいいって、せっかくのお祝いなんだから!」
握り拳付きの力説に、珍しく難色をしめしたのはバージルだ。
「スコットは見た目はそんな重視しないだろ、それより濃厚なチョコレートケーキとかの方がいいんじゃないか?」
「え、スコットはさっぱりしたのが好きだよ!ヨーグルトアイスケーキがイイと思うなぁ!」
これまた珍しく、バージルの意見に真っ向から反対したアランは、胸を張ってみせる。
「僕、買い物の時に一緒に甘いモノ食べに行くから知ってるもんね!」
末弟の役得ぶりを堂々と宣言するのに、バージルとゴードンが返す言葉を見つけられずにいると。
『スコットのケーキは、絶対にイチゴが乗ってて生クリームが塗ってあるデコレーションケーキだ』
どきっぱりと告げた声に、びく、と3人が振り返ればホロのジョンが腕を組んで見やっている。
『3人ともどういうことなのか説明してもらおうか?僕抜きにスコットのバースデーケーキを決めようとしてたというのは、許しがたいね』
通常より数段低い声に、光の無い目。
他の兄弟の時に口をはさんできた試しがないし、己の誕生日でさえ5号から降りてこないというのに。
だから、下手に声をかけない方がいいと判断したのが、裏目に出たらしい。
だが、これ以上の災厄を逃れるには、方法はヒトツだ。
「あーと、うん、ジョンの言う通りでいいんじゃないかな?」
あっさりとアランが土俵から降りると、ゴードンも頷く。
「だね、白にイチゴが映えてキレイそうだし」
「その、なんか、心当たりが?」
一応は話を進める努力もしつつバージルが尋ねれば、あっさりと返事は返る。
『ああ、今年の最高のイチゴデコレーションケーキの店はすでに選定してある、予約も問題ない』
予約までしてたのか!という3人のツッコミは、賢くも各々の心にとどめられる。
「あ、でも、取りに行かなきゃ、だよね?」
『それも問題ない、すでにケーヨに頼んである』
ドきっぱりと告げたジョンは、睥睨するように3人を見回す。
『君たちは、てんで頼りにならないからね。それから、当日は僕も降りるから。スコットに言ったら、わかってるね?』
慌てて、こくこくと頷く3人を見たのか見ないのか、一方的に通信は切れたのだった。



2016.04.04

■ postscript

お兄ちゃん生誕祭で、いぞさんより、お兄ちゃんにバースデーケーキを(サプライズでJさん降臨)。
お題ありがとうございました!

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