□ 小さな甘い宇宙
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「補給物資送ったから」
そう、スコットが通信を入れてきたのに、ジョンはわかった、と返す。
ほぼ定期の補給について連絡を入れてきたのは、ジョンがきつく言ってあるからだ。
イレギュラーなモノを入れた時には、絶対に連絡を入れること、と。
元々、スコットは自分が買い物担当の際に、気まぐれにお菓子などを買うことがある。ある意味スコットらしいのだが、自分のではなく兄弟たちの為の、だ。
地上にいれば、何気ないタイミングで渡してくれるのだが、その延長線上だったのか、いつだったかスコットは補給物資に紛れ込ませてきたのだ。しかも、日用品じゃない方の箱に。
確かにお菓子は開封必需品ではないかもしれない。けれど、賞味期限は存在する。
ジョンが気付いたのは、とうに賞味期限が過ぎ切ったころだった。スコットに腹が立ったのではなく、気付かなかった自分に猛烈に腹が立ったのだが、その苛立ちの勢いのままスコットにヤツアタリのように、こういうの入れた時はちゃんと言ってくれ!と告げたところ、実に律儀に連絡を入れてくれるようになった。
連絡が入るたびに、ジョンは少しだけいたたまれないけれど、ひどくウキウキしてしまう。
さて、今日は何が届くのだろうか。
八分が、永遠の時間に感じたころ。
「ジョン、補給物資が届いた」
少しだけ呆れたようなEOSの声に、いそいそと補給口へと向かう。
そして、急ぎではない方の箱を真っ先に開く。
一番上に入っていたのは、小さな袋だ。
取り出してみれば、それはロリポップのチョコレートらしい。
ヒトツは、夜空を思わせる青に銀色の星が瞬いており、もう一つはそこから取り出してきましたとでもいうかのような、可愛らしい星型。
子供だましのようなモノではあるけれど。
幼い頃から、とにもかくにも宇宙に惹かれ続けてきたジョンのことを、誰より身近で見ていてくれたスコットが、自分を思い出して手にしてくれたモノだ。
両手に持って、くるくるっと回してみる。
うん、小さな優しい宇宙がココにある。
我知らず、笑みを深めたジョンは、もう一度くるくると回してみる。



2016.06.19

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