□ 守りたい人
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最初は、怒っていたのだ。
それはもう、ほっぺたをぱんぱんに膨らませて、食って掛かってきた。
「なんで僕をレスキューに出してくれないの?!ね、こないだのだって、ちゃんと出来てたでしょ?なんで?!」
なぜ、と問いながら、こちらの言葉は一切聞かない勢いでまくしたてるのを、スコットはただ聞くしかなかった。
そして、一息ついたところで、そっと告げたのだ。
「アランには、まだまだやらなくちゃいけないことがたくさんあるだろう?」
穏やかに微笑めば、う、と素直に言葉に詰まった。
「昨日の課題がまだ終わってないと、ジョンから聞いてる」
そう、きっぱりと原因を告げれば、しょぼん、と肩をおとしてしまった。
「なあ、アラン。アランじゃレスキューが出来ない、とは言ってない。だが、やるべきことをやらずに出るのは、許可出来ない」
しっかりと目を見て続けた。
この点、アランにはどうしても心に刻んでもらわねばならない。確かに今は、この家がインターナショナルレスキューを運営している。
だけど、とスコットは思うのだ。
弟たちは、けしてこれに縛られる必要は無い、と。
もっともっと広い世界を知って、そして惹かれる別の何かがあるのなら、それを選び取っていいのだ。
これは、別にアランに限ったことではない。
「アラン、お前の今の本分はレスキューじゃない、勉強だ」
きっぱりと告げたスコットに、アランはこく、と素直に頷いた。
「ごめんなさい、ちゃんとするよ」
そして、しおしおと退散してややしばし。
ちゃんと終わった課題を示したアランは、今度は今日のスコットのレスキューについて語りだした。
あそこが凄かった、ここが驚いた、などなど。
いつの間にか膝ににじりよっていた弟は、色々と一生懸命にやりすぎたのだろう。
とうとう、くったりとスコットに寄り掛かったまま眠りはじめてしまう。
「まったく、忙しいヤツだな」
そう呟きつつも、スコットはそっと抱き寄せる。
スコットにとっては、まだまだ幼い部分がたくさんな弟も大事な大事な守るべき者だから。



2016.06.26

■ postscript

「#ふぁぼしてくれた人の一枚絵で勝手に小話を書く」、よりみちさんのお兄ちゃんの腕の中でぐっすりなアーちゃんで。

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