□ 彼はいつも先に行く
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「僕が行く」
きっぱりと言い切ったスコットに、誰もが「ああ、やっぱり」と思う。
皆での出動となったレスキューの直後に入った、ジョンからの少し渋い顔での次のレスキューの案件。
もちろん、兄弟の誰もが、このまま飛ぶことを思ったのだけれど。
それをスコットは許さない。
「お前たちは戻って、ポッドのメンテをしていてくれ。必要になれば呼ぶ」
兄弟たちに目もやらず、ごく当然のようにグローブを直す、その指先まで当然と言っているように見えるから不思議だ。
ぷうっと頬を膨らませたアランが何か言い出す前に、バージルは口を開く。
「わかった、スコット。また別の案件が無いとは限らないからな」
「ああ、頼む」
あっさりとスコットは頷くが、この言葉でアランも一応は飲み込んだようだ。
今のレスキューはポッドを中心としたものだった。このまま行っても、3号も4号も手元にない、ということは。
もちろん、スコットの意図はそこではない。
この人数は書ける必要が無いものへ、弟たちを巻き込む気は無いだけだ。その点は、バージルも賛成なので大人しく2号へと兄弟たちを導く。
レスキュー現場へと一機向かう1号を見送りつつ、2号を浮上させる。
「2号、帰還する」
『ああ、お疲れ』
あっさりと返してくるジョンへと、付け加えるのは忘れない。
「他の手が必要になったら」
『連絡するさ、安心しろ』
ほら、とっとと帰れと言わんばかりにジョンが手をふる。
似たもの同士である長兄と次兄に苦笑が浮かびそうになるのを抑えつつ、バージルは頷く。
「ああ、頼む。待ってる」
心からの信頼だけは、裏切れない兄と知っているから。



2016.06.26

■ postscript

「#ふぁぼしてくれた人の一枚絵で勝手に小話を書く」、ことなさんの手袋直すお兄ちゃんで。

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