□ シアワセな寝床
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どこでスイッチが入るのか、時折アランは大暴れする。
別にモノに当たるとかではなく、「レスキューに連れていけ」と。
今日もそうだった。
ラウンジ、キッチン、シャワーとついてまわり、あげくにはトイレの前にも陣取った。
最後には、部屋にも侵入してきてさんざ喚いた。
けれど、惣領息子たるスコットの仕事は単にレスキューだけでは終わらない。
「ともかく今日は寝ろ」
と押し出したはずだったのだが。
すっかりと日付変更線を超えてから、やるべきことをすべて終えて、喉の渇きを覚えて部屋を出てみれば、だ。
扉の脇に座り込んですうすうと寝息を立てている人影があるではないか。
スコットは我知らず眉を寄せる。
いつもなら、追い出したところで諦めるのに、今日はそうではなかったらしい。
ここでヘタに甘い顔をすれば、増長するのが目に見えている。だから、スコットは肩をゆする。
「どこで寝てるんだ、アラン。起きろ」
強めの振動に、さすがに目を覚ましたのかアランの瞼が震えて、ゆら、とその青い瞳が見える。
部屋に行け、と続けようとしたのだけれど。
その前に、ふにゃり、と笑われて、スコットの邪険に告げるはずだった言葉は霧散する。
「あー、スコットだあ」
完璧に寝ぼけた声を上げたアランは、えへへーと声をあげながら、ぎゅむーと膝を落としたスコットにすがりついてくる。
「へへへー、スコットー、だーいすきー」
酔っ払いか、コイツは。とうっかりと思うが、そんな言葉と裏腹に己の手はすがりついてきた弟をしっかりと抱きとめてしまっている。
ああ、本当に敵わない。
「……アラン、レスキューになんか囚われなくていいんだ」
そっと告げつつ、くったりと寄り掛かる体を抱き上げる。そして、ゆっくりと彼の部屋へと歩みを進める。



2016.08.31

■ postscript

#リプ来たセリフでワンシーン書く という気まぐれタグにお付き合いいただいた結果。
よりみちさんより「……どこで寝てるんだ、アラン……起きろ」

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