[ Back | Index | Next ]


ニ宮
 羊宮  Aries

少女はいつも、枯れた大地を耕していた。
病みついた父に、弱り果てた母に、生きてもらうため。
先祖がやっと、手にすることのできた痩せ果てた大地を。

枯れた土地に実るのは。
やっと、生きていけるだけの穀物。
それでも、少女は天の恵に感謝した。
「生きていくことができます」
そう言って、頭を地につけた。

ある日、少女は、一匹の羊に出会った。
群れなければ生きていけないはずの、生き物。
が、それは、じつに堂々と立ち、こちらをまっすぐに見つめていた。
少女が驚いて、見つめていると。
羊は愛おしむように、枯れた大地に口付けた。
そして、ゆっくりと、立ち去った。
あとには、小さな、見たことのない実を残して。

少女は、その実を、その場所に植えた。
水をやり、いとおしみ、育てた。
やがてその実は、豊かな実りをもたらした。
病みついた父の病を治し、弱り果てた母を元気にできるだけの。

少女は、微笑み、そして、羊のいた地にくちづけた。
-- 2000/06/12

[ Back | Index | Next ]



□ 月光楽園 月亮 □ Copyright Yueliang. All Right Reserved. □