『 星降ル夜 壱 』



幼い頃、星が降るのを見た。
綺麗だと思った。
だけど、誰にも言わなかった。
大人たちは眉をひそめ、「不吉の前兆」と目をそむけたから。
確かに星は、『定め』を語るけれど。
『定め』を読めるようになったいまも。
あの、いくつもの光の軌跡を、綺麗だと思う。
たとえ、全てが終わる前兆だったとしても。

いつものように、星を読んでいた夜だった。
「星が降るのは、よくないらしいね」
磊落な調子で言いながら隣に立つ人に、視線を移す。
彼は、にこり、と笑った。
「綺麗だけどなぁ」
言いながら、夜空を見上げる。
が、自分の視線は彼に向いたままだった。
驚いたのだ。
あっさりと綺麗だと言ってのけたことに。
人が皆、不吉と目をそむけるものを。
自然と、笑みが浮かんでくるのがわかる。
嬉しかったのだ。
同じことを思った人がいたことが。
それから。
それが、ついていくと決めた人間であることが。
「私も、綺麗だと思います」
空に視線を戻しながら、静かに言う。
「お前もか、嬉しいな」

あの時の星は、すべてが順調と告げていた。
今日の星は、終わりを告げている。
ヒトツの命が、終わることを。
秋の夜空を見上げながら。
星が降ればよいと思う。
彼と自分が、綺麗と思った景色の中がいい。
自分が終わっていくときには。


〜fin.
2001.03.26 Meteoric Showery Night I

**************************************************

蛇足!
夜空を見上げているのは、亮先生。
だから、かつて隣に立った男は彼の主君でございます。
ええ、誰がなんと言おうと(苦笑)。


[ 戻 ]