[ Back | Index | Next ]

『シャーロック・ホームズの素敵な冒険』


原題の『SEVEN PERSENT SOLUTION』とは、ホームズがやってたコカインの濃度。
この話、けっこうスゴイ設定ですよ、ホームズがヤク中になっちゃう(!)んですから。

●●●

この話、終始、ワトソンの友情に涙です(ワトソニアンの紋章発動中)。
先ず、ヤク中だって感付いたら、当時はまだ一般的でなかったヤクを抜く方法の論文を探し回り、それがフロイト博士(あの、心理学で有名な)の手によるものとわかれば、ドイツまで連れてくべく、あの手この手を考える。

●●●

ヤク中だと自覚させて、治療をすることを承知させたのはフロイトだけど、隠してあるはずのコカインを探すのはワトソンのが上手(笑)。
パイプの中に隠してたコカインを、さっさと探し出す。
ヤク切れで錯乱したホームズに罵詈雑言をさんざあびせられるのに、なにも言い返さない。
「裏切りモノのユダめ!」
って言われてたけど、これってキリスト教信者にとっては最大の屈辱では?
それにも耐えるワトソン、凄すぎる。

でも、暴れられた時はぷつっときたらしい。
ホームズの急所をなぐって、気絶させた。
ミゾオチって、外すと大変に痛いそうでして、さすがお医者様。急所をハズさない(笑)。

半分くらい正気に戻ったホームズが、自信なさそうに
「君は、僕の親友、じゃなかったかない?」
って言ったのは、すっごくかわいかった。
もっとも、正気じゃない時も、ホームズを連れ出すために四苦八苦しまくったために疲れきっちゃって、つい汽車で眠っちゃったワトソンに、そっとコートをかけてあげたりして、性格までは崩壊してないのね、というのが涙ものだったですが。
(元々壊れた性格というのは置いておいて)

●●●

そして、偶然か必然か、事件が発生。
ここらから、ホームズ、本領発揮です。
ホームズにとって、いちばんの薬はやはり『事件』なのね(笑)。
前半のイタイくらいのシーンとはがらっとかわって、いきなり、推理と冒険の世界に。
でも、やっぱりホームズはこうでなきゃ!
汽車での大挌闘はすっごい、映像的でかっこいいです(嬉)。
汽車から落ちそうになったホームズを、自分も危険になるのわかってて助けるワトソンもカッコいいんですが、お礼かわりに
「もう二度と、ボズウェルなんて人に言わすなよ!」
って言うのが!
ともかく、随所に友情ありまくりなのが、ひたすらにツボです。

●●●

事件が片付いた後。
ホームズは、落ち着くまでロンドンには帰らない、とミラノ行きの汽車に勝手に乗っちゃいます。
これを見たワトソンの台詞がふるってる。
「僕の読者はどうしてくれるんだい!」
ホームズはにこにこしたまま、
「崖から落ちたことにでもするんだね!」
……というわけで、ホームズはライゼンバッハの崖から落ちたことになったのでございます。


[ Back | Index | Next ]