[ Back | Index | Next ]


夏の夜のLabyrinth
〜10th 迷宮の中の迷宮〜

■pebble・13■



十二月三十一日十八時、リスティア首都アルシナド。
総司令官室にいる総司令官、天宮健太郎の机上の通信機が呼び出し音を立てる。
三人の視線が集まり、健太郎が応答する。
『アファルイオ国境警備兵、撤退完了』
「わかった、ご苦労……上がっていいよ、いい年を」
相手の返事を待たずに、通信を切る。
アファルイオ国境警備兵を、今晩だけ撤退させることを命じたのは、他ならぬ総司令官自身だ。
なのに、健太郎の表情はどこか冴えない。
すっかり陽の落ちた窓の外へと、視線をやる。
ぽつり、と呟く。
「いよいよ、か」
仲文と広人も、黙り込んだまま、窓の外へと視線をやる。

同日、十八時五分、リスティア−アファルイオ国境。
国境警備兵の代理、という名目で到着した一部隊がある。『第3遊撃隊』だ。
この付近は草原が広がっている。
「へぇ、気持ちイイくらいだな」
あたりを見回しながら忍が伸びをしてみせる。須于は、少し肩を寄せる。
「昼間ならね」
あるのは、冴え冴えとした満月だけだ。そよ、とさえ吹く風も無い。
須于が眉をひそめるのも理解出来る不気味さだ。
俊が、にやりと笑う。
「大丈夫だって、今日は幽霊も逃げてくからさ」
「来るのは『緋闇石』だけだ」
ぼそり、と言いながらつけたジョーの煙草の火が、ぽつりと光る。
ここが、亮が選んだ『緋闇石』との対決場所だ。
『緋闇石』が暴れたとしても直接被害を受ける人もいないし、目撃者も出さずに済む。
いくつかの小型モニターを車に乗せてきた亮は、ヒトツに目をやって微笑む。
「紫鳳城への人出は、いままでにない様子らしいですよ」
「へえ?」
忍たちも、一緒に覗き込む。
「年送りの儀って、十時からだろ?」
「少しでもイイとこから見ようってやつだろ、徹夜組、絶対いるぜ」
「ご苦労なことだ」
亮が映しているのは、アファルイオ側の番組らしい。国境付近だから、そちらの電波もなんなく拾うことができるのだろう。
アファルイオ全土が盛り上がっていることは確かだ。はやから実況中らしい。
盛り上がって当然かもしれない。それこそ、現祭主公主になって初めての紫鳳城での祭事だ。国王も臨席するそれに、国民も参加できるというのだから、一大イベントに違いない。
「これだけ証人がいれば、充分ね」
「予定通り、動くかな?」
少々、俊は心配そうだ。
ここまでは確かに予定通りだが、イベントに参加しているのは民衆だ。そこまで、思惑通りに動かせるものか?
「どうなるにせよ、動揺はしますよ」
あっさりと亮が答える。俊は、怪訝そうになる。
「どうなるにせよ?」
「こちらの予定通りにいくにせよ、国王が祭主公主に暗殺されるにせよ、ということです」
「怖いこと言うのね」
亮の顔に浮かんだのは、笑みだ。
「祭主公主断罪を予定通りに出来るかどうかは、国王と周光樹の腕の問題です」
「お膳立てはしてやったもんな」
忍も、にやり、と笑う。
「それより、麗花だよ」
「そうだな、うまく脱出できりゃイイけど」
「得意そうだが」
ジョーが言うものだから、思わず忍たちは笑い出す。
「確かに」
「かもしれないわ」
亮も、楽しそうな笑みになる。
「それに、紫鳳城警備は祭主公主に気を取られているはずです」
隙は、充分に出来ているはずだ。

十八時十二分、アファルイオ首都レパナ、紫鳳城内。
麗花は、それまで大人しく着ていた着物を脱ぎ捨てる。
下に今朝から着込んでいた身軽な遊撃隊仕様に早変わりというわけだ。得物であるナイフも、仕込み終えている。
窓の外をそっと窺う。
警備兵たちの緊張は極度に高まっているようだが、それは麗花の為ではない。
史上最高の民衆が紫鳳城に詰め掛けていることと、祭主公主が年越の儀を行うことが原因だ。間違いがあっては、絶対にならないのだから。
窓から離れて、時計を確認する。
年送りの儀に参加する王族も特別な衣装をまとわなければならないが、その準備に侍女たちが現れるまでには一時間以上ある。
そこで気付かれたとしても、追っ手はもう間に合わない。
にやり、と笑みを浮かべる。
部屋の灯かりはつけたままにして、部屋を出る。
ここしばらく大人しくしていたのは、不機嫌を装う為だけではない。灯かりさえついていれば、部屋にいるのだと思わせる為でもある。
常套手段だが、基本でもあるということろ。
そっと扉を閉ざして、振り返って、ぎくりとする。
立っていたのは、年送りの儀にかこつけた一連の計画の準備で忙殺されているはずの、顕哉と光樹だったから。
「やっぱりな」
「陛下のカンは、さすがとしか言いようがありませんね」
「スキがあるとしたら、今日しかない」
格好からいって、すでにごまかせる状況ではないとわかっている。
麗花は黙り込んだままだ。
顕哉が、言葉を継ぐ。
「祭主公主を追い詰める囮の役を放棄してまで、どこへ行く気だ?」
読まれた驚きで表情の消えていた麗花の顔に、笑みが浮かぶ。
「今の私のいるべき場所に」
返事には、躊躇いがない。
「お前はアファルイオ王家の姫だ、いるべき場所はここしかない」
「二年前までは、そうだったね」
麗花はすっとスカートの下に手を伸ばす。光樹がなにを取り出すのか敏感に察して、己の腰にのモノに手をかける。
「公主、対決は愚かですぞ」
「対決する気なんて、ないよ」
言いながらも、得物のナイフを取り出す。アファルイオ製の綺羅な造りのモノではない。遊撃隊に所属する麗花の為に、彼女の手に合わせて造られたシンプルな実用向きのモノだ。
反対の手が、トレードマークともいうべきポニーテールをしてた紐をほどく。
落ちてきた髪は、案外長い。
アファルイオ王家の女性は、己の髪で様々な式の時には結い上げなくてはならない。紫根の瞳とともに王家の証とされるのが、髪の長さ。
なにをする気か気付いた顕哉が、思わず声を荒げる。
「やめろ、麗花!」
光樹もすっと前に出るが、後ろに飛びのきざま麗花はやってのける。
髪は、肩の長さでばっさりと落ちたのだ。
顕哉と光樹の瞳が、見開かれる。
「私、行かなきゃ行けない場所があるの」
麗花は、まっすぐに顕哉と光樹を見つめる。
「麗花の言う通りにした方が、得策かと思いますが」
急に加わった新しい声に、三人とも頭上を見上げる。この声は、よく知っている声だ。
すぐに、声の主は姿を現す。
顕哉の真後ろに、鋭い針を喉笛につきつけながら。
「雪華!」
光樹が驚きと焦りの入り混じった声を上げる。
「陛下、ご無礼をお許し下さい」
いつも通り動きやすさ優先の超ミニのチャイナドレスに肩まである手袋、そして膝上のブーツ姿の雪華は、落ち着き払ったものだ。
「お話を聞いていただく為に、少々手荒な真似をさせていただきます」
「話?」
「ヒトツは、麗花のことです……二年もリスティアで生活していたのならば、急な行方不明は不審に思われましょう。探されればやっかいなコトになる恐れもあります」
顕哉は、喉笛につきつけられた針に視線を落としながら、答える。
「それはリスティア総司令部に申し入れれば……」
「二年間、遊び暮らしていたとでもお思いですか?責任を途中で放棄することを、アファルイオ王家である孫氏の一員が潔しとするとは思えませんが」
雪華の口調は冷静そのものだ。
「後始末してくる時間くらいは、あってもよろしいかと」
「しかし今日はダメだ、大事な役目がある」
急に、力強い口調になる。
「そのことですが、コレがあれば事足りるかと」
言いながら、空いている方の手でなにかを取り出して顕哉の手に渡す。
ビニール袋に入っているモノを見た顕哉も光樹も、不審そうな表情だ。
「かんざし?」
「祭主公主のモノです、よくご覧下さい」
言われて凝視していた光樹が、はっとした顔になる。
「これは……!」
「暗殺用の針をかんざしに作り変えたモノ、祭主公主の指紋と、先々王、文哉様の血と思われる褐色痕が紙の下に」
言われてみれば、このかんざしには見覚えがある。斎外公主の件で紫鳳城に登城した時にも身につけていたモノだ。暗殺の証拠となるモノを、そうそう身の側から離すわけ無い。
「いったい、どうやって?」
「入り込む隙さえあれば、あとはどうとでも……当人は、すり替えられたと気付いてもおりますまい」
笑いを含んだ声が答える。
隙というのは、祭主公主が紫鳳城に登城して留守だったことだ。天楼の部屋に侵入して先々王のデスマスクを粉々にしたのは、雪華。
「光樹、急ぎ解析させよ」
「は」
ビニール袋を受け取り、仕舞い込む。
が、話が済んだわけではない。
「雪華、いままでいったい……」
「朔哉様が亡くなられました」
朔哉と光樹の顔に、再び驚愕が浮かぶ。
「な……に………?!」
「お見舞いに来てくださった晩に……眠るようなお最後であられました」
静かな声が、本当のことだと告げる。
「ご遺体は見つかってはならぬもの、私の判断で消しました」
それが嘘だということを知っているのは、麗花だけだ。
もうすでに亡くなったことになっている朔哉を、改めて埋葬することは出来ない。遺体を抹消したことに関しては、正しい判断だったとしかコメントしようがないが。
光樹が腹立たしそうに声を荒げる。
「なぜ、知らせなかった?!」
「お知らせすれば、祭主公主にも知られます」
本当に朔哉が死んだだけだったとしても、と麗花は思う。雪華は誰にもそれを告げず、祭主公主を挑発したのかもしれない。
想った人を奪った者を、追い詰める為に。
「麗花は、私が国境まで送り届けます」
「……わかった」
大事な髪を切られた上、証拠まで用意されては止めようがない。
「雪華、麗花を無事送り届けよ」
顕哉は、静かに言う。雪華の構えていた針が、離れる。
「お聞き届けいただき、ありがとうございます」
それには答えず、麗花に向き直る。
「仕事のケリを最後まで、つけてこい」
「兄さん?」
「孫家の名にかけて、いいかげんな仕事ぶりは許さん」
満面の笑みが、麗花の顔に浮かぶ。
「ありがと、兄さん!」
思いっきり抱きつかれて、顕哉は目を白黒させる。が、気を取り直して、ひそ、と麗花の耳に告げる。
「たまには手紙くらいよこせ、あまり心配させるな」
顕哉の首から離れた麗花は、雪華と並んでから、にやりと笑う。
「気が向いたらね」
手を大きく振って見せたかと思うと、二人とも姿が消える。
光樹が、二人が消えた方向を見ながらつぶやくように言う。
「本当に、よい居場所ができたのでございましょう」
「ったく、人の気も知らないで」
顕哉は、大きなため息をつく。
「俺……やっぱり甘いかな」
光樹はかろうじて笑いを飲み込む。やっぱりもなにも、大甘だと思うが口にはしない。
顕哉も光樹も、いつまで感傷に浸ってる場合ではないと知っている。朔哉が亡くなったという事実に打ちのめされている場合でもない。
真剣な顔を見合わせる。
「では、取り急ぎ解析にかけてまいります」
「頼む」
この証拠が雪華の言う通りなら、自白を引き出すのは容易になる。
確実に、祭主公主を追い詰められる。

二十一時十八分、アファルイオ首都レパナ、紫鳳城内。
年送りの儀の準備をすっかり整えた顕哉は、国王しか入れぬ部屋に他人の気配を感じて剣を握る。
感じた気配が覚えのあるモノであることに気付いて、戸惑いも覚える。
その気配は、もうこの世のモノではないはずだったから。
「何者だ?」
押し殺した声で問う。
「お前の瞳、俺は好きだよ……幸運の印にしちまえよ、顕哉なら出来るよ」
まるで、風が流れるように聞き覚えのある声がして。
そして、気配は消える。
顕哉は、剣をおろして呆然と呟く。
「兄上……?」
ゆっくりと、隠したままの瞳に手をやる。
隠しつづけることを選んだのは、自分だ。
いつも朔哉は笑って言っていた。
『俺、お前の右目に祈ってから戦に出るって言ってやるよ、そうすりゃすぐに幸運の印だ』
颯爽と鎧を身につけ馬と共に駆けつづけていた兄が、風騎将軍と慕われる兄が羨ましかった。ずっと憧れていた。
あんな風に、まっすぐに前を見つめられたらいいのに、と思っていた。
見つめようとしていなかったのは、自分だ。
朔哉は、こうも言ってくれていたではないか。
『顕哉、お前は王に向いているよ、民に信頼され敬愛される王になれる』
麗花にも、自分で言ったのではないか。
孫家の名にかけて、いい加減な仕事ぶりは許さないと。
朔哉のようにはなれない。
自分は、自分でしかないから。
だとしたら、自分にしかなれない王になるだけだ。
顕哉は、手にしている王家伝来の剣を握りなおす。

二十一時三十四分、リスティア−アファルイオ国境。
ふと、アファルイオ側に視線を向けたのはジョーだ。敏感な耳の持ち主である彼は、なにかの音を聞きつけたらしい。
「麗花だ」
忍たちもジョーが視線を向けた方に笑顔を向ける。
が、ジョーは眉を寄せる。
「もう一人、いる」
「周雪華でしょう」
落ちついた口調で、亮がにこりと微笑む。
「いいのか?」
正体を知られても、という意味だ。忍の問いに、亮は頷いてみせる。
「他言はできませんから」
「どういうことだ?」
俊が眉を寄せる。しない、ならともかく、できない、とは。
「まさか、リスティア特殊部隊にアファルイオ王家の姫君が所属してるなんて、王には報告できないですよ」
楽しそうに亮は言う。
「なるほどな」
思わず、笑ってしまう。
笑っている間に、足音ははっきり聞き取れるモノになる。月明りの下、姿も影ながら見えてくる。
須于が、大きく手を振る。
「麗花!」
あちらからも、大きく手を振り返すのが見える。
顔が見えなくても、満面の笑みだと確信出来るくらいに。
忍たちも、大きく手を振る。
走り寄って来た麗花は、須于に飛びつく。
「ただいまっ!」
「おかえりなさい」
須于は、笑顔で抱きとめる。
俊が、不思議そうに目を見開く。
「どーしたんだ?随分とすっきりしちまったじゃん」
いつものポニーテールがないことに気付いたらしい。顔を上げた麗花はニヤリと笑う。
「後腐れないように、許可もらってきたついでにさ」
「見つかったのか」
ジョーも、驚いたらしい。少し目を見開いている。
「うん、でも大丈夫」
「じゃなきゃ、ここに来れるわけないもんな」
忍は、得物である龍牙を抜き払う。
「麗花、後ろ向け。酷すぎるぞ、そこ」
「お、そろえてくれるの?」
笑顔のまま、後ろをくるりんと向く。長身の剣が、はらりと空を切ると本当にキレイにそろう。
俊たちが笑う。
「もう、職人の域だな」
「うん、似合ってるわよ、麗花」
「ありがと」
それから、少々後ろに大人しく立っていた人の方を振り返る。
「紹介するね、私の幼馴染みでアファルイオ特殊部隊長の周雪華」
忍が笑顔で、一歩進み出る。
「初めまして、リスティア軍第3遊撃隊の忍です」
にこりと笑って、手を差し出す。
あっさりと自己紹介されたことに戸惑ったらしい雪華は、少々ぎごちなく手を握り返す。
すぐに、次が顔を出す。
「俺は俊、麗花の幼馴染みがこんなに美人で嬉しいね」
言われて、思わず笑顔が浮かぶ。
「それは、どうも」
「須于よ、よろしくね」
「はい」
金髪碧眼は、黙り込んだままだ。麗花が肘鉄を食らわせてから言う。
「ジョーよ、愛想がないのはいつもだから気にしないで」
「美人が来たもんだから、照れてるんだぜ」
俊がにやりと笑う。
最後に、人形のように精巧なつくりで華奢な人物がにこりと笑う。月明りの下では、動かずにいれば本当に人形と見紛うばかりだ。
「ご協力、感謝しています」
雪華もにこりと笑う。
「こちらこそ」
どうやら、亮のことは見知っているらしい。特殊部隊長という役目柄、要人と周辺は抑えているのかもしれない。
「あの仕掛けは、あなたが?」
「悪戯をして、すみませんでした」
「いえ」
挨拶が済めば、あとは本題だけだ。
「最後まで、見届けさせてもらいに来ました」

二十一時四十六分、アファルイオ首都レパナ、紫鳳城内。
祭主公主入城を見届けた光樹は、証拠の解析結果とかんざしを受け取り、年送りの儀の祭壇へと向かう途中だ。
城内には、すっかり人気がなくなっている。皆、年送りの儀の為に、祭壇周辺に集まっている。
解析部隊も、すぐに祭壇へと向かうだろう。
顕哉も、もう祭壇へ登っているはずだ。
人がいないはずの城内に、しかも自分のごく近くに何者かがいるのに気付いた光樹は、足を止めぬまま剣に手をかける。
目を細め、間合いをはかろうとした時だ。
聞き覚えのある声が、言う。
「おいおい、俺を斬らないでくれよ、光樹」
信じられない声だ。雪華から、死んだと聞いた。
だが、間違いなくこの声は。
「朔哉?」
すぐそこに立っている気配も、たしかにそうだ。守りきれなかった、親友のモノ。
「死んだのでは、なかったのか?」
「死んだよ、言いたいことだけ言いに来た」
わけがわからない。こうして話しているのは、朔哉自身としか思えないのに。が、自身が死んだことさえあっさりと言うあたりは、らしいとしか思えない。
「光樹にはイチバン苦労させてるよな、すまない」
光樹の戸惑いにおかまいなく、朔哉は話し続ける。
「顕哉の補佐を、頼むよ」
「頼まれなくても、するさ」
ふ、と笑顔になる。
「俺たちの夢も」
「ああ」
「一樹と、見てるから」
光樹は、瞼を閉ざす。
「ああ、俺に任せろ」
「ありがとう」
「らしくもないこと言うな」
楽しそうな笑い声が聞こえる。まったく変わらない、屈託の無い声が。
笑いがやんで、静かな声が聞こえる。
「じゃあな」
「じゃあな」
気配が消えてから、光樹は瞼をあける。剣を、差し直す。
まっすぐに前を見据えて、歩き出す。

二十二時、アファルイオ首都レパナ、紫鳳城祭壇。
国王の正装をまとう顕哉と側で護衛する光樹の待つ祭壇へ、祭主公主が登りおえる。
その姿を見た民衆から、わっと歓声が上がる。
祭主公主は、にこりと微笑み、祈りの為に手を合わせて高く掲げる。
年送りの儀の、始まりだ。
が、その時。
はっきりと響いた声がある。
「待たれよ」



[ Back | Index | Next ]


□ 月光楽園 月亮 □ Copyright Yueliang All Right Reserved. □