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ニ宮
 馬宮  Sagitarious

理想があっても、力がなければどうにもならない。
動かしようのない、事実。
歴然と立ちふさがる、壁。
それでも、彼は。
前に進もうと決めた。
誰かが、大事なモノを、失うことの無いように。
彼の大事なモノは、二度と、戻らないから。

どんなに、秘しても。
どこかから、それは漏れる。
決起をするはずの、前日。
彼の秘したる本拠は、血塗られた。
どこから漏れたのか。
誰が漏らしたのか。
そんなことを考える間もなく。
彼の命すら、危うくなる。
そして、彼は、生き延びた。

なんども決起し、軍を起こし、敗れ。
なんど、その命を危険にさらしたろう?
しかし、今日は。
周囲に見える限り、全て、敵。
彼を、排除しようとする者ばかり。
思わず、ちいさく嘆息する。
そして、目を閉じた。
聞こえる、小さなうねり。
矢が、こちらに向かう音。
自分を狙う音。

たしかに近づいてきていたうねりが、消える。
目を開けた彼は。
金の矢が、自分を狙う矢を、折るのを見た。
死は許さないと、無言で告げる。

彼は、目を開けた。
前を見た。
いつか、決めた日と同じ視線で。
行く場所は、ひとつ。
つくるものは、ひとつ。
誰かが、大事なモノを二度と失わない場所。
彼が、つくると決めた場所。
-- 2000/07/17

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