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Splendid Game

 の狭間に祈ろう  New Year's Eve

暖かな部屋への扉を、勢いよく開ける。
コートを脱ぎ捨てながら、ホームズがため息混じりに言う。
「どうにかケリがついたな」
それを聞いたワトソンは、マフラーを緩めながら微笑む。
「君は、興味ある事件と年越しの方が良かったんじゃないのかい?」
どんな時であろうと、事件がないと不機嫌なホームズだ。
言われたホームズは、少々困った表情になる。
いつも、『興味ある事件さえあれば、いいんだ』と言っているのは自分だと、よくわかってる。
もちろん、ワトソンが嫌味で言ったのではないことも。
マフラーもかけおわって、ソファに腰を降ろしてから。
ぼそぼそと呟くように言う。
「たしかに、クリスマスだろうがイースターだろうが面白い事件があれば飛び出すし、ヒマになれば不機嫌にもなるけどね」
正直な言葉に、ワトソンは思わず吹き出しそうになるのを堪える。
「その……なんて言うか……」
相変わらず、こういうことには不器用なままらしい。
ワトソンは、グラスにワインを満たしてホームズに差し出す。
にこり、と微笑んだ。
「ホームズ、もうすぐ新年だよ?」
グラスを受け取ったホームズも、照れ臭そうな笑顔を浮かべる。
教会の鐘が、軽やかな音を立て始める。
「今年も、いい年になることを祈って」
グラスが、澄んだ音をたてる。
目線までグラスを上げたワトソンは、悪戯っぽい笑みになってウィンクする。
「そして、興味深い事件が数多くあることを」
「心より祈って」
ホームズも、にやりと笑う。

-- 2001/12/26



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