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癪な師匠と弟子
 夜に咲く

俺は今、重要かつ重大な局面に立っている。
なんせ、数少ない息抜きの場所が奪われそうなんだ。
もっとも、この草原は誰のものでも無いんだから、苦情は筋違いっちゃそうなんだけど。
このまま静かに立ち去るのが穏便だって知ってるけどさ、それって負けたみたいで気に入らない。
いや、勝ち負けの問題じゃないけど。
ったく、こんな状況じゃ、考えもまとまりゃしない。
ああ、もう我慢ならん。
俺は勢い良く、上半身を起こす。
「資源のムダ使いもたいがいにしろよ!」
いきなりの声に、延々と草原に響き渡ってた声が止まる。
少女っていう表現がぴったりの女の子が、目をまん丸くして俺を見つめる。
こんなとこに自分以外の者がいるとは思わなかったらしい。
が、次の瞬間には、ぷうっと頬を膨らませる。
「悪かったわねっ!サイアクな歌声でっ!」
ったく、わかってないわけか。
俺は額を思わず抑える。
「言葉はきちんと聞けよ。俺はムダ使いをするなと言ったんだ」
ぷしゅ、と音がしそうな勢いで頬が縮むのと同時に、それじゃなくてもくりくりとした目が、更にまん丸く見開かれる。
どうやら、ただウルサイって言われたわけじゃないとは理解したらしい。
相手はお子様なんだし、あんまもったいぶっても仕方ないか。
「類稀な声を、そのサイアクとやらの歌い方でムダにするなって言ってるんだよ」
彼女は、首が折れそうな勢いで傾げる。
「タグイマレってなぁに?」
「滅多に無いってこと」
言って、まだ難しいなと言い直す。
「声は、ものすごくイイってことだよ。ちなみに、ものすごくってのは、世界で一番かもしれないくらいって意味だ」
首を傾げたまま、彼女は目も口もまん丸にする。
「うそぉ」
「嘘ついても意味無いだろ」
ま、反応見てりゃ、今まで何て言われてきたかは簡単に想像つくからさ。もっともっていやもっともか。
「その極悪の歌い方さえ直せば、御前で歌うなんてのも夢じゃないね」
今度は、目が細くなる。
かなり疑ってんな。
「じゃ、試してみろよ」
ちょいちょいと三点ばかり、すぐに直せるとこを教えてやる。
「で、さっきの出だしだけやってみな」
いくらか緊張した顔つきで、彼女は俺の言った通りに歌いだす。
みるみるうちに目が丸くなり、口の方は、ぱちんと閉じる。
俺は、にやり、と口の端を上げてやる。どうよ、ってわけだな。
目玉が飛び出しそうなほどに、目を見開いていた彼女は、数回、瞬きをする。
それから、呟くように言う。
「魔法みたい」
思わず俺は、笑ってしまう。
確かに、聞こえがまるで違うからさ、そんな風にも思うのかもね。バカにしたわけじゃなくてさ、俺にそれを言うってのが面白かったんだ。
彼女は、走り寄ってくると、ずい、と身を乗り出す。
「ね、お手本みせて!」
「お手本?」
何を言い出すやらと、俺は首を傾げる。
「どうやって歌ったら綺麗に聞こえるか知ってるんでしょ?やってみせてくれない?」
「悪いけど、それは出来ないね」
むう、と頬が膨らむ。
「なんで?」
俺は肩をすくめる。
「これでも魔法使いの端くれなんでね。用も無いのに歌うのはご法度」
魔法使いが歌う歌は、どんなんでも呪文になる。
例えば、師匠が歌ったとしたら、とんでもなく下手くそでも、けっこうな魔法が発動するってわけ。上手かったら、推して知るべしってヤツだ。
「じゃあ、じゃあ、教えてくれるだけでも!」
彼女がもっと身を乗り出して、俺の手を取ろうとしたのを、すんででかわす。
「おいおい、魔法使いに触れちゃいけないって、教えてもらってないのかよ」
「んもう、魔法使いってメンドウねぇ。ともかく、お願いっ」
ぺこり、と頭を下げる。
「私に、歌い方を教えて!歌うの、好きなの。だから、どこで歌ってもうるさいって言われないように、教えて欲しいの」
頭を下げる前に、目の端に涙が浮かんでるのは見た。声が、必死だってのも聞きゃわかる。
感情的には、ちょいとほだされるかな。
ただ、彼女の言う通り、魔法使いってのはなかなかに面倒臭いんだ。
「どんなお礼してくれるのさ?」
「お礼?」
彼女は、顔を上げて、首を傾げる。
俺は、もう一度軽く肩をすくめる。
「そうさ、魔法使いにモノを頼む時にはそれなりの礼儀ってものがあるんだぜ?魔法が欲しいにしろ、そうじゃないにしろ、対価がないとね」
彼女は、たいそう難しい顔つきになる。
「それって、お金のこと?私、おこづかいはちょっぴりしかないから、足りないかなぁ?」
「別にお金とは限らないさ。俺が教えた分に見合ったお礼になるなって思うものなら、なんでも」
俺の言葉に、彼女はますますわからない顔つきになる。
「私はどうしたら歌い方を教えてもらえるの?」
「そうだなぁ」
教えるとなったら、ここでしか無理だ。
しかも休み時間を割くしかなんだから、面倒なことこの上ない。
ざっと考えて、俺のメリットってないんだけどさ、なんとなく興味も出てきちゃったんだよね。
ちょいとしたアドバイスだけで、ここまでいい歌になる彼女の声を伸ばせるだけ伸ばしたら、一体、どんな歌を歌うんだろう?
俺は、いくらかもったいぶりながら言ってやる。
「それじゃ、来る時間を今日よりも遅らせてもらうかな。俺にも休憩時間が無いとたまらないからね」
そこで初めて、自分の歌声が何をしたのかを理解したらしい。
彼女はひどくすまなそうな顔つきになって、頭を下げる。
「お休みのオジャマしちゃったの、ごめんなさい」
それから、やっぱり目を丸くして顔を上げる。よくもまぁってくらいに、表情がくるくると変わるのはおもしろいね。
「あれ、えっと?」
「だから、もうちょいここに来る時間を遅くしてくれたら、教えてもいいって言ってるんだよ」
ぱぁっと満面の笑顔になる。ふぅん、やっぱ笑顔がイチバンいいかな。
「ホント?!ありがとう!えっと」
聞きたいことはわかってるんだけどさ、魔法使いは名前教えるのもご法度なんだよね。どうやって呼び分けるかって、通り名を使うわけ。
俺みたいに大魔法使いとして知れた師匠がいるなら、大魔法使いの弟子ってので、誰にでもすぐわかるって寸法。
たいていは根ざしてる地名が冠詞かな。そいつにしかない特徴ってこともあるけど。
でも、今回のところは弟子として教えるわけじゃないから。
「教える人を呼ぶなら?」
彼女は首を傾げる。
「先生?」
「よく出来ました」
に、と笑う俺に、彼女は深々と頭を下げる。
「じゃ、先生、よろしくお願いします」
へーえ、けっこう殊勝だな。
嫌いじゃないね、こういうの。
「じゃ、さっそく」
彼女は、瞳をきらきらさせて覗きこむ。
俺は、苦笑してしまう。
これはなかなか、熱心な弟子が出来たもんだ。見習わないといけなくなりそうだよ。
「今日のところは、さっきの三つだな」
「それだけ?」
なにやら、不満そうだ。そりゃそうかもな。なんせ、それだけであんなに良くなったんだ。もう少し手を加えりゃ、また格段に良くなるって本人だって、もう知ってる。
先へ先へと進みたいのは、ごもっとも。
でも、それじゃ、結局は意味が無い。なんでかって。
「身につかなかったら意味無いだろ?もう一度、さっき言った通りに歌ってみ?ちゃんと覚えてるか?」
「覚えてるよ!」
ぷう、と頬を膨らませて言い返してから、彼女は歌いだす。
覚えは悪くないな、ちゃんとモノにしてる。それに、さっきよりもいい。
熱心な上に筋がいいか、将来有望ってヤツだな。
それが、いいことか悪いことか、俺にはわからないけどね。
一通り歌い終えた彼女は、小首を傾げて俺を見つめる。
「ちゃんと覚えてるし出来てるな。今日はこれでオシマイ」
俺の口調で、なんと言おうとお終いとわかったのだろう、彼女はこっくりと頷く。
「ありがとう」
殊勝な顔つきの彼女の前に、俺は立ち上がる。
「お疲れさん、今日のことは、誰にも言うなよ」
「え?なんで?」
大魔法使いの弟子が歌を教えるなんて、知られたらウルサイことになるに決まってるじゃないか。一人に肩入れに見えるようなことは、しちゃいけないんだよな、ホントのところ。
師匠に知られたら、あっという間に中止の上に罰掃除させられちまう。
そんなんもあるから、大魔法使いの弟子って通り名はご遠慮させていただいたんだけど。
「なんでも。もしも一人にでも漏らしたら、それでオシマイ。二度と無し」
いくらか、彼女の顔から血の気が引く。誰一人に言わないというのは、少女の年齢の彼女には難しいかな。
が、彼女は力強く頷く。
「うん、誰にも言わない」
「誰かに、どうして急に上手くなったかなんて言われたら、ともかく練習したんだって言っときな。嘘じゃないんだから。ほら遅くなんないうちに、帰りな」
肩をすくめる俺に、彼女は笑顔になる。
「うん、じゃあね!またね!」
走り出して、立ち止まって振り返って、大きく手を振る。
「ありがとう!」
俺も、軽く手を振り返す。



それから彼女は、実に熱心に通いつめた。
俺がヒトツ教えるたびに、彼女の歌は美しくなった。
そうして、娘さん、なんて呼ばれるような年になる。
「歌のお仕事をもらったの!」
笑顔の報告に、俺も笑みを返す。
「へーえ、どこでさ?」
「街にあるステージよ。ほら、小さなのがあるでしょ?」
街になら、師匠の使いでよく行くからね、それだけで俺にもわかる。
「ああ、あそこか」
飯も酒もいける所だから、飲んだくれてるヤツもいるかもしれない。けど、彼女が歌えば酔いも醒めるだろうな。
ま、あんまりガラのいいとこじゃあないけど、最初としては上々ってとこだろ。
「良かったじゃないか」
「先生も、見に来てくれる?」
瞳をきらきらさせても、それは駄目だな。
「遠慮しとくよ、歌ならさんざ、ここで聴いてるんだし」
「晴れ舞台なのに」
むう、と頬を膨らませた顔は、出逢った頃と変わらない。
俺は、肩をすくめる。
「無理無理、師匠にどやされんのはゴメンだよ」
彼女もとっくに、俺が大魔法使いの弟子だってことは知っている。大魔法使いの名を出されちゃ、彼女もそれ以上は強く言えない。
「んもう、魔法使いってホント面倒ねぇ」
頬を膨らませたまま言った後、すぐに殊勝な顔つきになる。
「でも、曲目のチェックはしてくれるよね?ちゃんと歌えるかも」
「もちろん、そこらは教えた身としては責任を持たないとね」
俺が言うと、彼女はまた、花のように笑う。



最初の舞台からそうは経たないうちに、彼女の名は国の中だけでなくて近隣諸国にも知れ渡る。
彼女の舞台は、華麗な歌劇場へも広がっていく。
聞いた者は皆、天から与えられた声、と賛美する。
俺の見込み通りってわけだ。
だけど、相変わらず彼女は街のパブと劇場のあいのこで歌い続けている。
あらゆる国の最高の歌劇場からの誘いを断り、王室付を断って。
「だって、お客様に近いんだもの」
彼女は、街の皆に、なぜと問われるたびに笑う。
が、街の人は、こう噂する。
彼女には、密やかに想う人がいるのだ、と。
かもしれないな、と俺も思う。
彼女の歌声に込められた感情の色は、間違いなく恋だ。
そして、それは年々、色濃くなっていってる。
彼女の歌を、さらに美しくしてるのはその色だから、俺は何も言わずにいるけどね。
だいたい、人の恋路を邪魔するほど、俺は無粋じゃないしね。
金よりも恋を選ぶってなら、それはそれでいいじゃないか。彼女の選択なのだから。
街の人はそうもいかないみたいだけどね。
あの人じゃないか、この人じゃないかと好き勝手に憶測しては囁きあう。
だけど、彼女は気にしない。
にこりと微笑んで、今日も変わらず練習へと現れる。
一度くらいは言っとくべきかな。
「そろそろ、俺の教えることも無さそうだけどね」
俺が言うと、彼女は首を横に振る。
「ちゃんとチェックしてもらっとかないと、私、油断して絶対にダメになるよ」
初心忘るるべからずってヤツか。
彼女がそう思うなら、この場はそういうことにしとくかな。
ま、あんまり強く言うのも、変な話だしね。
「そう思うならそれで、構わないけどさ。で、今度は何を歌うって?」
俺の問いに、彼女は笑顔でタイトルを答える。
ふうん、恋歌ねぇ。けっこう前からある歌劇に出てくるのを、誰だかが今っぽくして人気があるヤツだな。
「やってみ」
こくりと頷くと、彼女は背筋を伸ばして立つ。
ざっと歌い終えて、彼女は首を傾げる。
今のままでも、他人には追随不能って太鼓判押せる良さだけどさ。教えるって引き受けたからには、最高にしないとな。
「いいんじゃない。誰か、自分が想ってる人を浮かべながらなら、もっと良くなるだろうけど」
俺の言葉に、彼女はいくらか戸惑い気味の顔つきになる。
「別に今に限らなきゃ、ちょいと気になる人とかいたりしたこともあるだろ?」
肩をすくめた俺に、彼女は首を傾げたまま、尋ねる。
「その人を思い浮かべたら、たった一人の為の歌になりそうだけど?」
「構わないさ、恋歌なんだから」
中途半端なヤツがやりゃ嫌味だけどさ。神に祝福されたと言われる声で歌われたら、出るのは文句ではなく感嘆だ。
あの声で想われるのは誰かと、羨望の視線が集まるだろう。
実を言えば、もうヒトツ目的があったりもするんだけどね。こういつまでも、誰かを想ってあの舞台に留まってるのはあんまりよろしくない。
客と距離が近いことも、良し悪しだ。
たった一人の為に歌った歌は、その一人の元へと届くから。
彼女に、今、想っている人がいるのはわかってる。
はっきりさせて、少々策をろうすってのも悪くないかもしれない。彼女の為にも。



結局のところ。
俺は策をろうすることの無いまま、彼女の恋歌は、彼女の名声を不動のものにした。
あまりの美しさに、拍手すら忘れると言われた。
そうして今夜も、彼女はいつも通りに歌っている。
無二と言われる、恋歌を。
だけど、その歌は。
途切れた歌に、誰もの視線が集中する。
彼女の腹部からは、はたはた、と赤い液体が落ちていく。
目の前の男に、彼女は凍りついた笑みを向ける。
「バカね、こんなことをしたって私はアンタのモノになんかならないわ」
男が何を望んだのか、正確に知っている言葉。
歌姫の歌声に惹かれ、いつしか歌姫に恋焦がれ、他人を想う歌に耐え切れなくなって。
命を奪うことで、己のものにしようとした愚かな男。
赤い液体に染まった銀の刃物を握り締めたまま、男はがくがくと震える。
彼女は、まっすぐに立ったまま、まっすぐに告げる。
「私は、想った人のものにしかならないわ」
はっきりとした言葉の後。
まるで、かき消されたかのように彼女の姿は消える。

自分が立っているのが、いつも練習をしていた草原と気付くまでには、少しの間があったらしい。
彼女は、二、三度、瞬きをする。
そうかもしれないな、ここに来るのは、いつもなら陽の高い時間だからさ。
今は、ただ、月の光が静かに降りそそいでいる。
月の下、いつも通りの大樹の下に俺が座っていることに気付いた彼女は、少し首を傾げる。
「傷だけは塞いだよ。寿命は変えられない。さて、どこでどうしたい?」
俺は、彼女の問いに必要最低限だけ答える。
それだけで、彼女は好きに歩くことも歌うことも出来ること、ただし、時間はほとんど無いことを理解する。
腹に手をやって、彼女は本当に傷が無いことを確認してから、微笑んで、立ち直す。
す、と息を吸ったのを見て、俺は片手を上げる。
「あの恋歌なら、嫌ってほど聴いてる」
彼女は、その瞳だけで、どういう意味かと尋ねる。
「言葉通りさ。たった一人の為に歌われた歌は、相手に届くんだよ。あの歌を一人の為に歌ってみろと言ったあの日から、全ての歌が俺のところへと届くようになった」
今更、なに言い訳がましことを言ってるんだろう。
「……いや、最初から、ずっと聴こえていたさ。どこで歌おうが、何を歌おうが」
いつも、彼女の心には俺がいた。
知っていたんだ。
知っていて俺は、たった一人を浮かべてみろと言った。
俺の顔に、どんな表情が浮かんでいるのか、俺にもわからない。
俺は知っていて、突き放すこともせず、その手を取ることもせず。
今日を招いたんだ。
彼女は、ただ微笑んで。
そして、歌いだす。
出逢った日に歌っていた歌を。
柔らかで優しい歌を。
歌い終えた彼女の躰が、くらり、とよろめく。
次の瞬間。
彼女は、ふわりと微笑む。
「まさか、抱きとめてくれるとは思わなかったわ」
「かわいくないな」
俺は、皮肉に唇を持ち上げる。
彼女は、血の気の引いた顔で笑う。
「だって、ずっとずっとよ?どんなに上手く歌えたって、頭撫でてくれたことすらなかったじゃないの」
「魔法使いだからさ」
笑みが、大きくなる。
「魔法使いって、ホント面倒ね」
「本当にな」
そっと、頬を撫でる。
魔法使いなんてやってなかったら、とうにこの手を取って。
いや、抱き締めて離さなかったろう。
大魔法使いの弟子なんてもんじゃ、なかったら。
彼女は、自分の頬に触れた手を握り締める。
「ねぇ、歌を聴かせて?魔法の呪文じゃなくても、あるでしょう?」
俺は、微かに笑うと。
すう、と息を吸う。
古い言葉が、口から溢れ出す。
遠い昔、まだ魔法使いなんてこの世に存在するなんて信じていなかった頃に、教えられた歌。
優しい響きが、好きだった。
「ああ、知っているわ。古い歌集に載っていたわ」
静かな声が呟くと、やがて彼女の声が和す。
天に祝福された声と、魔法力の及ぶ限りに届く低い声が夜を包み込む。
やがて、歌は終わる。
俺は、無言のまま彼女の口を塞ぐ。
彼女は、微笑む。
「忘れないで?」
「忘れないさ」
花のような笑みが、凍りついたように止まって。
静かに、瞼を閉じる。
さらり、と風が吹いて。
どこにも、彼女の姿はない。



この国の者だけでなく、彼女が消えてしまったことを嘆いたけれど。
俺は、知っている。
風に、花に、木に。
どこにでも、彼女はいる。
朝に、夜に、春に、秋に。
いつでも、彼女の声は響く。
柔らかな歌を、俺の耳へと届けてくれる。

いつでも、彼女は俺の側にいる。


2005.04.30 The aggravating mastar and a young disciple 〜A flower open up on a moonlight night〜

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